約 2,021,257 件
https://w.atwiki.jp/mustnotsearch/pages/492.html
登録タグ GIF グロ ビックリ ホラー 危険度3 画像検索にて、女の子がドアからこちらを覗いてるGIF。 元ネタはゲーム『ToHeart2』。 途中で黒い画面に目と口のみがある画像が出てくるので注意。 ちなみに、この画像はかわいくさせての顔面パーツとしても使われている。 アーカイブはこちら。 ttps //archive.is/rLSXJ 分類:ビックリ、ホラー 、グロ 危険度:3 コメント りゅうおうたん保管庫 というサイトにこのGIF置いてたよ -- 名無しさん (2011-01-03 17 18 35) 一応絶叫がないのが救い?ってか前回も書いたようなきが、、、?消されました? -- SEA (2011-01-03 18 01 23) ToHeart2のこのみです -- 名無しさん (2011-02-24 20 39 31) この顔は・・・かわいくしてのやつか? -- 名無しさん (2011-03-07 09 07 06) ストーリーがまったくよめませんでした。でも、すごくびっくりしました! -- ギーグ (2011-05-12 18 08 55) これを見て心を痛めた人はToHeart2のこのみルートやって心を癒しましょう -- ヘタレ野菜王子 (2011-05-17 21 34 06) 絶対これは一番最初に出てきたジョセフィーヌの -- 名無しさん (2011-06-11 15 25 57) ↑人ですね -- 名無しさん (2011-06-11 15 27 05) 途中びびったww -- 名無しさん (2011-06-12 10 22 03) この人が作るのってだいたいグロばっかりw -- せびれう (2011-07-31 01 43 45) ヤンデレと打つだけでも出て来るんだがwww -- 平沢唯は俺の嫁 (2011-08-19 14 29 52) ドアから覗いてる画像は編集なしでも怖いよ・・・ -- 名無名無 (2011-09-30 19 00 27) ツンデレ GIFなら大歓迎です(ニッコリ -- 雑草 (2011-10-05 19 57 48) ↑ツンデレ GIF だと蓮コラでますよ・・・ -- ななしん (2011-12-10 11 02 04) このみ可愛いよこのみ、ヤンデレ大好きだから良かった -- 暇人 (2011-12-28 07 56 45) ↑2 因みに蓮コラだけじゃなくて、口にワイアーみたいなものを入れて口から血を出しているカップルとかの画像もありました(;ω;`) -- 風凛 (2011-12-31 17 09 55) ヤンデレってなんですか -- 名無しさん (2012-01-15 17 44 43) GIFってなんですか -- 名無しさん (2012-01-15 17 45 19) ↑x2私の為に死んで!の人のこと↑簡単に言うならばフラッシュみたいなモンですヨ。 -- SEA (2012-01-15 18 43 29) このみはこんな子じゃ・・・まあ大好物だけど。 -- 桜 (2012-01-16 02 01 17) ↑↑一応言っておきますがヤンデレってのは誰かを好きになり過ぎて病んじゃった人の事を指します。 -- 名無しさん (2012-02-17 14 48 25) おやすみ、ユッキー -- 名無しさん (2012-03-04 16 01 27) 歯もでてこなかったっけ? -- 名無しさん (2012-04-11 16 03 30) これ -- 猫村 (2012-04-11 20 22 28) ↑ミス これビビッたなあ・・・ -- 猫村 (2012-04-11 20 23 06) ↑×5に補足。 スクイズとか未来日記なんかは、けっこうヤンデレ的なところが多いので、ぜひ見たほうがいいかもしれません。 -- ホワイト (2012-04-13 00 49 04) タカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタ -- このみ (2012-04-19 17 00 14) 最近はヤンデレをよく見かけるようになったな一種の流行かなにかか? -- 赤目男 (2012-04-19 18 19 28) 見飽きねえw中毒になったwww -- 名無しさん (2012-04-19 18 53 33) ↑×2 そうですね…。しかしなぜヤンデレは人気になったのでしょうか? -- ホワイト (2012-04-19 23 19 35) ユッキー… -- うれしくて (2012-05-18 15 40 30) 私これゲーム感覚で見れました。 -- 名無しさん (2012-06-08 17 22 37) YouTubeでも発見できた。 -- 名無しさん (2012-12-08 09 48 12) 原作にこんなイベントあったっけ? -- まー。 (2013-03-06 07 20 12) ↑多分無いな -- タエちゃん (2013-03-08 00 12 02) ↑そうですか。ども -- まー。 (2013-03-08 03 26 54) これって,まどかちゃん? -- 名無しさん (2013-03-10 11 47 33) ↑トゥハート2言うゲームのヒロインです -- 名無しさん (2013-03-24 12 31 23) よしっっ!来たぜ!一番好きなジャンル!!←ヤンデレ -- 有魔 (2013-04-09 19 02 59) 見たことあるけど怖かったワロタ。 -- スイマヤー (2013-05-09 19 00 24) ツンデレの方の蓮コラは確認(一番下) -- はまなす (2013-05-09 21 00 06) ヤバイ -- 名無しさん (2013-06-13 23 48 09) ヤンデレよりツンデレ -- タツヤ (2013-06-28 20 32 47) ヤンデレ好きなんだがこわくてみれないw -- 名無しさん (2013-08-04 11 38 51) 病んでる?やんでる?ヤンデル?ヤンデレ!!ウッヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!Σ=(卍^o^)卍 -- 名無しさん (2013-08-04 12 01 42) ヤンデレかわいすぎだよ! -- 君と仲良くしたいなっ☆ (2013-08-30 21 15 10) (卍^o^)卍 (卍^o^)卍 (卍^o^)卍 -- チルノ⑨ (2013-09-24 21 47 12) スクイズのあの人の画像が出てきて少しビビった。 -- 名無しさん (2013-10-27 17 15 19) えっと、gifアニメについて説明が必要だなこりゃ。 -- 名無しさん (2013-10-27 17 18 25) ヤンデレ好き。大好き。うん大好き。愛してる -- KK (2013-10-28 19 38 50) 見方によるとかわいいですよ -- 魂 (2013-12-15 00 13 03) かわいくさせての顔が出てきました…。 -- ウルトラさん (2014-02-09 12 59 00) ヤンデレって、 -- ウルトラさん (2014-03-06 18 53 21) cdのやつかと思っていました。 -- ウルトラさん (2014-03-06 18 57 54) なんてゆーかタカくんってだれ?なぜそーーーーなったんだ?xxxってどなただろ?多分最後のほーで女の子が左手に持ってた首だと思うけど・・・謎が残る・・・誰か教えてください。すみません。 -- ふぁんしーあいらんど管理人 (2014-03-17 20 57 38) 黒い画面に目と口って星のカービィの洞窟冒険のボスみたいな感じ? -- 名無しさん (2014-05-25 23 39 47) なんだ………これか -- フォオクトの検 (2014-06-13 23 21 01) 友人に本気でビビられたんだが -- 名無しさん (2014-06-30 22 03 04) 気持ち悪い!! -- zz- (2014-07-12 18 25 29) ↑2私の友人も本気でビビったwwww少しかわいくさせてに似てる…ほんの少しビビったwでも面白い! -- 綾架 (2014-08-07 17 46 40) 何か放射線の影響で尻に何かできている画像があった -- りんごあめ (2014-08-10 17 26 13) ビックリよりもはやホラーかマイクラだ! -- ユッキー改めアズマッキー (2014-09-28 21 58 20) 正直これかなり苦手 -- 名無しさん (2015-04-06 22 50 57) さっき検索して出ませんでした(T -- エリガル (2016-05-21 16 20 49) りゅうおうたんとか懐かしいなー -- 名無しさん (2017-03-21 23 41 30) 悪いけど一人でゲームするならToHeart -- ビリー (2018-06-22 14 17 17) これ危険度2だけど侮れない、途中の目と口だけのシーントラウマになった -- 名無しさん (2019-03-03 17 12 26) けものふれんず.exeのアイツ? -- chokn118 (2019-11-02 20 56 43) ヤンデレとか、俺得。 -- 弥生 (2020-05-20 20 15 58) グロのカテゴリーもつけたほうがいいんちゃう 俺こーゆー二次元のグロ苦手・・・ -- 名無しさん (2020-10-18 14 06 56) 窓からこちらを見ている茶髪の女の子は「柚原このみ」である。「タカくん」は、元ネタトゥーハート2の主人公のこと。後半に出てくる赤髪の女の子(XXX)は「向坂環」である。このみが、昔からタカくんの事が好きだったのは事実だ。しかしながら、何が理由でこのように心が荒んでしまったのか。この恐怖映像の背景には何があったのか。勿論作者にしか知り得ない所である。謎が残る。あと柚原このみはそれでも可愛い。 -- 名無しさん (2020-12-15 21 59 57) ヤンデレ怖い... -- ゲーム太郎 (2022-01-10 17 55 16) GAME OVER(無慈悲) -- さの (2022-01-22 07 32 12) ヤンデレが怖いな -- 名無しさん (2023-03-28 10 19 18) こっわ -- タピオカパン (2023-05-18 19 16 43) 名前 コメント 耐性自慢(「こんなのヨユーw」「俺小6だけど見れたw」など)のコメントはご遠慮下さい (過去そういったことが相次ぎコメント欄停止にまで至ったことがあります)
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2428.html
213 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 20 52 19 ID MPaMNP4Q 「ちょっと待て!」 この瞬間、世界はキサラギの敵になった。 ちょっとしたお遊び。 あるいは、 ちょっとした悪ふざけ。 世界はそんな茶目っ気を許さず、あっさりキサラギを捨てた。 心臓の鼓動がうるさい。 カウンターの上に、一冊の漫画が乗っている。値段は……忘れた。そんなに高くない。 注目する客の視線は、まずは好奇心。 続いて侮蔑。 最後にカウンターの漫画を一瞥。そして嘲笑。 今すぐ世界が終わればいいのに。 そんなことを考えるキサラギの耳に、世界は遠い。 まるで夢の中のように。 世界は無音だ。 目の前で中年男が、嗜虐的な笑みを浮かべ、何かのたまっているが、それはキサラギの耳にも心にも遠い。 あまりに遠い。 無音の世界。 全てはあまりに虚ろだった。 そんな中、彼と目が合う。 カウンターをチラリ。 彼の眉がハの字に寄る。 (なんだそれ……つまんねえの……) おかしい。 全ての情報をシャットアウトしたはずのキサラギの心に届く声。 (しょうがねえな…今回だけだ…) まただ。 おかしい。 世界は自分を捨てたはず。だからこんなにも音がない。 こんなにも虚ろなのに――― 激しい衝撃音。 金属製の本棚が前倒しになり、四方に雑誌をバラまいた。 キサラギは、虚ろな目で彼の視線を捕まえる。 (ほれ、今だ) また聞こえた。 ふらっと足が一歩を踏み出す。 後は、勝手に足が動いた。 すれ違いざま、目が合う。 口元が少し笑ってる。 多分、自分も笑ってる。 こうして、キサラギは世界に帰還した。 逃げ込んだ路地裏で、キサラギは大きく肩で息をしながら、夕焼けに染まる空を見上げた。 ああ、世界はこんなにも美しかったのだ。 九死に一生を得た。あのまま行けば、自分はどうなったか。それは想像したくない。 しかし…あの少年は…… キサラギは首を振った。 もう会うことはないだろう。そう思った。 この時は。 春。 つつがなく受験を終えたキサラギは、第一志望の高校に入学する。 「リューヤ!おい、リューヤ!」 青い襟章が目印の二年生の男子生徒が、一人の少年を呼び止める。 その少年は、ちょうどキサラギの前を歩いている。 「…俺の名前を、安売りみたく連呼するな。気持ち悪い!」 少年が振り返る。 それが全てのはじまり。 214 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 20 53 11 ID MPaMNP4Q 「な、リューヤ!ノート見せてくれ!」 「知らん」 リューヤは気付かない。 一人の少女……キサラギが瞬きすら忘れてその背中を見つめていることを。 「な!リューヤ、この通り!」 「…しょーがねえな…今回だけだぞ」 ああ、そうだろう。キサラギが知る彼ならそう答える。 「リューヤったら、もう!そんなこと言って、いつも助けてくれるくせにぃ…」 「変態!まとわりつくな!」 抱きついて来た男子生徒と肩を叩き合い、談笑しながらリューヤは去る。 「先輩……リューヤ先輩!」 勝手に動いた口を押さえ、キサラギは、あっと後ずさる。 リューヤは少し気まずそうに振り返る。 「はぁ…あのな、せっかく知らん顔してやったのに、自分から話しかけるヤツがあるか」 キサラギの胸が大きく一つ跳ねる。 (覚えててくれた!) 初恋だった――。 それは、不意にやって来た嵐。 嵐はどこまでもキサラギを翻弄する。 必死になって気を引いて、必死になってかき口説く。 対するリューヤの口癖は、 「また今度な」 都合のいい言葉だ。相手を傷つけず、やんわり断るには一番いい言葉かもしれない。 キサラギは空回り、気ばかり焦る。 そんな中、雨が降る。 全力疾走のリューヤは、すれ違ったキサラギには目もくれず、一直線に校門目掛けて走っていく。 そして、見てしまった。 リューヤが、鞭打たれたような苦しげな表情で、一人の少女の肩を抱き寄せている光景を。 あれは、なんだ? 時間が止まった。 あれは、守っているのだ。キサラギはすぐに理解した。 リューヤは守っている。この世界の全ての悪意から、少女のことを守っている。 世界が回る。 自分は何をしているのだ。指をくわえて見ているのか。 なぜ、自分はあそこにいない。 あの少女……ああ…あれがそうか。 リューヤにフられて手首を切ったとかいう。 「おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい……絶対、おかしい」 間違っている。 キサラギは、よろよろと歩き出す。 あの少女……未夢とかいったか。 受験に失敗したらしいが、彼女は絶対馬鹿じゃない。 最初から知っていたのだから。 己が、全身全霊で寄りかかっていい存在を。 生まれてから死ぬまでの間に、いったい何人の人間がそんな存在を見いだすことができるのだ。 何故、自分はあの少女になれなかったのか。 215 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 20 53 42 ID MPaMNP4Q きっと、覚悟が足らなかったのだ。 だからこんなおかしなことになる。 覚悟だ。 どうしてもあれが……リューヤが欲しい。 この世界は、キサラギには寒過ぎる。 虚ろに過ぎる。 覚悟だ。 それだけでよい。 だって、あの少女は、それだけでリューヤを手に入れているではないか。 キサラギは覚悟を示す必要があった。
https://w.atwiki.jp/notsearch/pages/253.html
ヤンデレ gif 検索すると誰か個人が作ったヤンデレの自動で動く画像が出てくる。ヤンデレが苦手な人は検索注意、そうでなくても 初見でビビる人多数。多少耐性があってもキツイでしょう。 ジャンル 画像・動画 マイクラ系 総合評価 レベル3 コメント所 こえええええええええええええええええええwwwwwwwwww -- rottar (2012-01-24 20 58 03) 名前 コメント タグ ヤンデレ 可愛いじゃない
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1483.html
98 :ヤンデレ素直クール:2010/02/19(金) 02 33 24 ID 0ylXbI2v 第二話 3レス消費 律の告白から一週間後の帰り道。 すでに薄暗くなりつつある通学路を律と明の二人は歩いていた。 その道すがら、明は気になっていたことを聞いてみた。 「・・・でもさ、須崎さんはなんで俺のことが好きになったの?」 何気ない一言だったが、律は明の目をじっと見つめた。 明は律の探るような目つきが苦手だ。しかし、同時に吸い寄せられてしまう。 いつも通る街角だが、律に見つめられているだけで全く違う場所に思えてきた。 「・・・??須崎さん?俺、なんかまずいこと聞いた?」 思わず尋ねると、律は目をそらすことなく微笑んで答えた。 「いいや。それよりも、君が私に率直に聞いてくれたことが嬉しいんだ。」 「後の一言は余計だったが、及第点だ。ありがとう。」 こう言って律は一息ついた。手を握る律の力が強くなる。 「君の問いに答えたいが、長くなるぞ。それで良いなら、寄り道しよう。」 明は神妙にうなづいた。 「いいよ。俺も、なんていうか、須崎さんのこともっと知りたい、し。」 薄暗いなか、律の目だけはなぜか爛々と輝いているように見えた。 「ふふ、君も私のことを知りたいと思ってくれるんだな?嬉しいよ。」 でもそれなら、と微笑んで律は付け加えた。 「お互い、名前で呼び合おう。明。率直かつ素直に、な。」 ※※※※ 99 :ヤンデレ素直クール:2010/02/19(金) 02 36 23 ID 0ylXbI2v 10分ほど、住宅街を抜けていくと、律のお気に入りだという喫茶店についた。 ジャズソングが静かに流れる、高校生には似合わない店。 しかし、大人びた雰囲気の律にはちょうど良いのかもしれない。 たっぷりと生クリームを使った濃厚なココアが運ばれると、律は話しだした。 それこそ自分の趣味や好きなものから家庭環境、生い立ちに至るまで包み隠さず。 しかも、それがプライベートな部分になればなるほど、言葉に熱がこもっていく。 「私の両親は互いに喧嘩していてね。ずっとだったよ。」 「それから二人は私を憎むようになった。お互いの子だと思うと我慢ならないそうだ。」 堰を切ったように喋り続ける律を前に、明は圧倒されていた。 「彼らは互いにずっと嘘をつきあっていてね。きっとそれが喧嘩の原因なんだろう。」 「しかも私を前にすると二人とも途端に優しい顔ばかりさ。下らない・・・。」 よくよく考えて見れば、今や恋人とはいえお互いほとんど接点などなかった。 今日まで交わした言葉など挨拶とか、その程度だろう。それなのに。 「私が家を出されて、祖父の家に引き取られるその時まで、二人とも優しい顔だった。」 「でも私は知ってたんだ。あいつらは私を追い出す算段を整えていたんだ。こそこそと。」 それなのになぜ、律はこんなにも赤裸々に話せるのか、明には分からない。 なんとなく感じる、あの違和感。 「普段怒鳴りあう夫婦が夜中には突如静かになるんだからな。盗み聞きしたんだ。」 「それで、最後に言ってやったんだ。」 「厄介払い出来て良かったな、って。全部、聞いてたぞ、・・・って。」 一息に語りつくした律の瞳にはうっすらと涙が溜まっていた。 最後は声が詰まっていたので、泣いていたのかもしれない。 何と言ってよいのかも分からず、明はただ律の手を握っていた。 ありがとう、と頬を染めた律は 「私が素直や、嘘にこだわるのは、きっとそのせいなんだ。」 と締めくくったのだった。 ※※※※ 100 :ヤンデレ素直クール:2010/02/19(金) 02 40 03 ID 0ylXbI2v 自分の半生を語りつくした律の瞳は涙を湛えながら輝いていた。 どう考えても、恋人とはいえよく知りもしない男に話すことではない。 どうしてそんなに開けっ広げなのか。 どうしても疑問に思えた明は控えめに口を開いた。 「あの・・・律、さんてさ。いつも、こんな感じなの?」 非難するつもりはなかった。ただ知りたかっただけである。 しかし、明の言葉に律は怪訝な顔をする。 「こんな、とはどういう意味だ?私は、なにか変だったか?」 予想外に不満げな律の反応に、明は驚く。 一転、不穏な雰囲気に思わずしどろもどろな言葉しか返せない。 「あ、いや。何ていうか、その悪い意味じゃなくて・・・」 煮え切らない明の目をガチリと喰らいつくように律が捉える。 その目はまるで蛇や獣のような、獰猛な輝きを放っていた。 「なんだ?遠慮なく言ってくれ。」 「あの、律さんが素直というかストレートというか・・・」 「えと、・・・言い方が、悪かったよね。ゴメン・・・」 ギラギラとした光を増していく律の目が怖くて、謝罪してしまう。 律が静かに切り込んでくる。 「私が素直なのが、何かいけないのか・・・?ゴメン、とは何だ?」 そこには静かに怒りだした律がいた。 時々見せる可愛らしさとは間逆の、般若の顔。 何かいわなければいけない。だが分かっていても頭が働かない。 「いや、その・・・。」 きゅうう、と律は目を細める。また、明の中を探ろうとしていた。 「君に対してありのままでいることが私の全てだ。分からないのか?」 「なぜいけないのか教えてくれ。私が明に素直になって何が悪い?」 詰まった明の首にそっと律の手が添えられる。 「もういい。後で聞く。」 添えられた両手はそっと首を絞めつけはじめた。 じわじわと絞め上げながら、律は明に顔を近づけてゆく。 なぜか身体が石のように重く、明は声を上げることさえできない。 肺は悲鳴を上げているのに、何も出来ないままだ。 律は微笑みながら、耳元で囁いた。 「教えてくれ。私の何がいけないんだ?必ず直すから・・・」 明はそれを最後に意識を失った。 ※※※※
https://w.atwiki.jp/agptagpt/pages/7.html
ヤンデレ属性を持つカードが場に出たとき、自分がコントロールするクリーチャー1体を対象とする。 対象がブロックされる場合、ブロックしたパーマネントを破壊する。 対象が場にいなくなったとき、このカードを生贄に捧げる。 この効果は対象かこのカードが場から離れるまで続く。 かわいいぜ(0) インスタント ~は赤である あなたがコントロールしていないすべてのクリーチャーは、ヤンデレ属性を得る。 (この効果はターン終了時に終わらない。)
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1918.html
161 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 22 57 00 ID 3YlMb2N3 今日も今日とてゆるゆる過ごし、やがて気付けば下校時間。 日と月がバトンタッチをする時間、夕日が二つの影を伸ばしている。 「そう言えば、緋月の兄貴ってウチの生徒会長やってたんだって?三年くらい前に」 中でも長い方の影の持ち主、って要は俺、御神千里はいつものようにみんなとゆるゆるとダベる。 「…はい、お兄ちゃんが生徒会長で、お姉様が副会長だったと聞いています」 そう応じるのは小さく細い影の持ち主、緋月三日。 相変わらず華奢で細身なので、無駄にデカい俺と並ぶと兄妹のようにも見えるが、実際はそろそろ名前呼びイベントとか欲しい時期の恋人同士である。 「俺も今の生徒会長から聞いただけだけど、ハンパ無いイケメンで破天荒つーかアグレッシブな人だったとかー」 今年度の生徒会長を思い出しながら俺は言う。 俺と緋月の交際を聞いた美少女狂いの彼女が、珍しくいろいろと緋月の兄、緋月一日(ヒヅキカズヒ)に話してくれたのだ。 曰く、不正を是正するために学生運動まがいの大騒ぎを起こしたとか、曰く告白してきた百人近くのの女子をことごとく振ったとか、曰く学園中の生徒から慕われていたとか曰く―――いやこの先は止そう。 「…はい、どんな相手にも物おじしない人で、頭とかもすごい良い人なんです。…憧れの、自慢のお兄ちゃんです」 俺の言葉に緋月は憧憬のこもった目でそう言った。 「……ふぅん」 実際、憧憬に値する人物なのだろう。 あの美少女狂いの変人でさえ明らかな尊敬した口調だったし。 …緋月も、兄のことを語る時は何となく気安い感じだし。 「嫉妬!?」 「いやいやいや」 緋月の過剰(?)反応をいなしながら、俺はゆるゆる歩を進める。 「…私は、こちらなので」 「んじゃなー」 「…はい、また明日」 途中で、緋月と別れた俺は1人、今の友人関係に想いを馳せる。 葉山と緋月は最初は随分仲が悪いと思ったが、最近は随分話せるようになってきたと思う。(葉山は、もう諦めたと言っていたが) 明石はしばしば葉山にアプローチらしきものを仕掛けているが、全くもって気付かれる様子は無い。 けれど、決して仲が悪いようには見えないので、希望はあるんじゃないだろうかと思う。 そして、緋月と俺。 正直なところ、俺の中には最初アイツに対して積極的な感情は無かった。 ただ、アイツの頑張る姿が何か良いな、と思っただけだった。 今でも、アイツへの感情が激しいものだとは思わない。 けれど、アイツといるのは悪くないと思う。 世話のかかる面はあるけれど、世話をするのは嫌いじゃない。 恋人としてはいささか踏み込みすぎている部分はあるかもしれないが、俺自身としてはそれに不満は無い。 別に、うるさくされてる訳でもないしな。 まぁ、熱烈に愛する対象と言うよりは、家族みたいなモン? まぁとにかく、アイツといる時間は嫌いじゃない。 正直、好き、なんだと思う。 これからもそんな時間をアイツと過ごしていきたいと思うし、アイツがそれを望んでくれているなら嬉しく思う。 それは、積極的な感情、なのかもしれない。 そんなことを思いながら、部屋のドアを開ける。 「ただいまー」 誰もいるはずの無いマンションの室内に、俺は呼びかける。 うん、いる「はず」の無い「はず」だ。 今日は親は遅いし、他に(緋月を勘定にいれなければ)家族は居ない。 だから、この家に今俺意外に誰もいない。 そのはずだった。 162 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 22 58 12 ID 3YlMb2N3 「おかえりなさい…。今日は、早かったのですね…」 そう言って姿を現したのは、見覚えの無い女性だった。 年齢は恐らく、俺達より少し年上、10代後半から20代前半といったところか。 俺ほどでは無いが背は高い。 シミ一つない陶磁器のような肌が特徴的だ。 目鼻立ちは日本人形のようにクセ無く整っており、夜空の色をした眼は吸いこまれそうな魅力がある。 ハッとするほど美しい黒髪も相まって、奥ゆかしげな和風美人といった雰囲気。 ただし、首から下は全然奥ゆかしく無い。 プロポーションが良すぎるくらいに良い。 グラビアアイドルがハダシで逃げ出す位に肉感的である。 淫微と言っても良い。 なまじ一挙一動が優雅なので、逆に惹きつけられる。 彼女と言う人間そのものが、ある種の芸術品のように見えた。 そして、彼女はその美しい手足を惜しげも無く俺の眼にさらしている。 彼女の体を隠しているのは、エプロン一枚に見える。 いわゆる裸エプロンである。 正直、引いた。 ……これは、笑うところなのだろうか。 そもそも、この状況は何なんだ? 親がデリヘル嬢でも呼んだのか? あの人、女装好きの変態ではあるけれど、ゲイってわけじゃないからな。 俺にはそんな素振りを見せないだけで結構溜まっている筈―――ってそんな話で無く。 「……ええっと、すみません」 俺は何とか、彼女に対する言葉を絞り出す。 「はい、何でしょう、義弟くん…」 その女性は、いちいち優雅な動作で応じる。 服装が裸エプロンなんでそれが逆にエロい。 平静を装わなきゃならんこっちの身にもなって欲しい。 って言うかオトウトくん?そう言う設定なのか?」 「失礼ですが、どちらさまでしょうか?俺――僕と貴女は今日初めてお会いするものだと思うのですが」 目上の相手なので、一人称を言いなおし、なるべく丁寧に聞いてみる。 「あら、それは失礼…。では、私のことは通りすがりのお義姉様とでも呼んで下さい…」 じゃあそのまま通り過ぎて頂きたい。 って言うかおねーさま、って何よ? 「もう少ししたら、食事の準備が整いますから…。ゆっくり、待っていてくださいね…」 「いや、あの…」 「待っていてください、ね…」 穏やかながら、どこか有無を言わせぬ口調でそう言って、おねーさんはナチュラルにキッチンへと戻る。 キッチンからは彼女の言葉通り美味しそうな匂いが漂ってきている。 そこは俺の場所だ。 つーか、答えを見事にはぐらかされた。 「答える気は無いってコトか…」 俺はカバンを放りだし、リビングにゴロ寝する。 取りあえず、あの女性は放置しよう。 恰好がアレなだけで、取りあえず害は無いっぽいし。 ……それにしても裸エプロンの美女と二人っきりか。 ……緋月の奴に知れたらあらぬ誤解を招きそうな状況である。 ピンポーン…ピンポーン… そんなことを考えていると、家のチャイムが鳴る。 「義弟くん、出ていただけますか…?」 キッチンからおねーさんの声が聞こえる前に、俺はもうインターホンに応じている。 「はいはい、御神です」 『…御神くん、…ドアを開けていただけませんか…?別に、怒ってるわけではありませんから…』 インターホンのマイク越しに聞こえのたは、緋月の声だった。 随分と押し殺したような声だった。 163 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 22 58 55 ID 3YlMb2N3 「おっけー。今開けるね。でもどうしたん?さっき別れた所なのに…」 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン 「話してる途中にチャイムを鳴らすなよ!」 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピピンポンピポンピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポ… 「分かったから分かったから。今開けるからそんな高速でチャイムを押すなって。近所迷惑だから」 ピポピポピポピピピピピピピピピピピーーーーーーー! 高速で押しすぎて、連打が線のようになってる。 …微妙に分かりづらいが、どうも緋月は怒っているらしい。 この感じだと、下手をしたら過去最高クラスかもしんない。 無警戒にドアを開けたら、ちょっと厄介かもしれない。 軽く注意しつつ、俺はドアを開ける。 「うわあああああああああああああああん!」 ガチャリ、と開けた瞬間、涙目の緋月が飛び込んできた。 ナイフを振り上げての、渾身の体当たりだった。 ―――ってナイフはヤバイバ! 164 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 22 59 19 ID 3YlMb2N3 咄嗟に身を捻ってかわす。 「ひぎゃ!」 そのままの勢いでびたーん!と床の上にころぶ緋月。 「あ、ごめん…」 意外と痛そうな音に、思わず謝る俺。 取りあえず、転んだ時に緋月の手から離れたナイフは俺が確保しとこう。 コイツにこんなモンを持たせるのは、赤ん坊に核ボタンを持たせるようなものだ。 そんなことをしていると、緋月が鼻を押さえながらも起き上がり、俺に向き合う。 「うわきものうわきものうわきものうわきものうわきものうわきものうわきものうわきものうわきもの~~~~~~~~~~!」 涙目になりながら、ぽかぽかと俺の胸板を叩く緋月。 本人としては殴ってるつもりなのだろうが、コイツの基本スペック(攻撃力とか)は低いので大して痛くは無い。 「ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない~~~~~~~~~~!」 ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか こう言うテンションの緋月は珍しい。 「いやまぁ、取りあえず落ち着けって」 くしゃくしゃと緋月の頭を撫でながら、俺は言う。 「私がいないからって、裸エプロンといやらしいことをしようとするなんてぇ!お姉様となんてぇ!うわーん!ころしてやるころしてやるころしてやる~~~~~!」 ぽかぽかぽかぽかぽかぽか 「いやいや、やらしーことなんて何もないって。誤解だって」 ぽかぽかと俺の腹を叩き続ける緋月の頭をくしゃくしゃと撫でる。 …しっかし、何で裸エプロンのおねーさんがウチに居るなんて知ってるんだろ、緋月は? 「失点」 その時、冷たい感情をのせた声が、その場に響いた。 「想定していたよりも2分55秒も到着が遅れましたよ、三日…。この遅れは致命的にもなりえます…」 そう言ったのは、噂のおねーさまだった。 美しい黒髪をゆらりと揺らし、何ら動じることなく言葉を紡ぐ。 美しい黒髪……? 彼女の髪に妙な既視感を覚え、思わず緋月を見る。 緋月の髪はおねーさんと同じくらい艶やかな黒髪だ。 いや、髪だけでは無い。 真っ白な肌も、癖の無い顔立ちも、緋月とおねーさまはどこか似ている。 面影が、ある。 「…お姉…様」 おねーさまの言葉に、緋月はビクっとおとなしくなる。 「…二日(ニカ)、お姉様…」 緋月は、裸エプロンの女性を見て、そう言ったのである。 165 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 22 59 49 ID 3YlMb2N3 緋月二日(ヒヅキニカ) 正直、彼女について俺が知ることはそう多く無かった。 緋月三日の姉で、緋月家長男の緋月一日(ヒヅキカズヒ)の妹。 19歳の大学生。 緋月家の家事担当。 そして、緋月三日が誰よりも恐れる相手。 それが、その人が今目の前に居た。 「さぁ…、冷める前に召し上がりなさいな…」 いつの間にかダイニングに食事を並べ終え、裸エプロンのおねーさまこと、緋月二日さんは言った。 我が家のダイニングは、完全に二日さんの天下だった。 ちなみに、二日さんはいつのまにか清楚なロングスカート姿に着替えている。 「「いただきます」」 取りあえず、俺と緋月(妹の方ね)はそろって手を合わせる。 二日さんが用意してくれたのは、ハンバーグだった。 ワインの香りが上品なソースが香る、上品な感じの逸品である。 「しかし、驚きましたよー」 俺は、ナイフでハンバーグを切り分けながらそう言った。 「緋月―――三日さんのお姉様が我が家にいらっしゃるなんて。しかも、食事までご用意していただくなんてありがとうございます。事前に仰っていただければ、おもてなしの用意をしておきましたのに」 正直なところ、緋月まで来るのなら自分で作りたかったというのが本音だ。 アイツが俺の料理をキラキラした目で頬張る姿を見るのは俺の楽しみの1つだし。 俺の言葉に、二日さんは薄く微笑む。 「お気遣い無く…。妹の恋人である貴方は、いずれ私達の家族になるのですもの…。家族が家族の所に来るのに、何の気兼ねも問題も無いでしょう…?」 その言葉は、自分がここに居る理由を追求するなと言っているようにも聞こえた。 ……ん、美味しいけどちょっとソースの酸味が強いかな? 緋月(妹)はむしろもう少し甘めの方が好みっぽい気がするけど… もしかしてこのレシピ、本来は別の誰かのための料理なのかな? 例えば、二日さんの一番好きな人とか。 「と、緋月。口にソースがついてる」 ふと、俺の横に座る緋月に声をかける。 「「(…)はい(…)?」」 緋月(彼女)と二日さんが同時に反応する。 って、今この場には緋月姓は二人いるんだった。 「ええっと、妹さんの方」 「「(…)はい(…)」」 いや、確かに二人とも上に兄姉がいるけれど! ここまでハモると確信犯なんじゃなかろーか! …とはいえ。 「緋月三日よ」 どうにも気恥ずかしいが、改めて聞いてみる。 「…はい」 「下の名前でお呼びしてもよござんしょか」 「はい!」 輝くような笑顔で答える緋月もとい三日。 この笑顔をみられただけで、今日1日生きてて良かったと思わされる。 ……それはともかく。 「ところで三日。一体全体どーして俺ん家におねーさんが来てるって分かったん?俺も来てるの知らなかったのに」 三日の頬についたソースを拭き取りつつ聞いてみる。 「…私も全然知りませんでしたよぅ!お姉様が御神くんの家に来てるなんて。丁度家について、いつものように御神家監視カメラの映像を見て癒されようと思ったら、お姉様があんな恰好で映っていてぇ…」 興奮した様子で答える三日。 つーか今すげぇこと言いましたよね。 監視カメラって… いやまぁ、今さら何されたって驚きゃしませんが、もう家ン中で迂闊なことはできやしないな。 「あー、それじゃ誤解してもしゃーないか…」 「それで、取るものも取らずに取り合えずナイフだけ持ってこっちに来たんです」 「明らかに取らなくて良いものを取ってきてるよな!」 思わず三日にツッコミを入れる俺とは対照的に、二日さんはどこか満足げに頷いている。 「何を忘れてもナイフ一本は忘れてはいけませんからね、三日…。護身、殺害、料理…これ一本で何でもできますからね…。長いこと調きょ…もとい教育し続けた甲斐があります…」 二日さん、あなたが原因ですか…。 っていうか今調教って言いかけましたよね。 緋月家の教育方針は色々と問題がありませんか? 166 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23 01 43 ID 3YlMb2N3 「……料理にはちゃんと調理器具を使った方が良いと思いますよ?」 色々ツッコミどころはあったが、俺は取りあえずこれだけは言っておくことにした。 「もちろん、料理は言葉の綾ですわ…。ですが、嫁入り前のか弱い娘が出歩くのに護身の術は必須…。そうでしょう、義弟くん…?」 二日さんが当然のように言った。 「―――俺はそのか弱い娘に殺されかかりましたがね、今さっき」 俺は苦笑しながら言った。 なまじ間違ったことは言っていないだけ性質が悪いな、この人。 「…け、けれど、お姉様。…本当に浮気では無いんですか?」 恐る恐ると言った風で二日さんに聞く三日。 「浮気です」 「ええー!」 真顔で即答する二日さんに、目が飛び出んばかりに驚く三日。 驚き過ぎてキャラが崩れている。 「と、言ったらどうしますか…?」 そう続ける二日さん。 「…えう」 二日さんの言葉に涙目になる三日。 「…お姉様に本気になられたら、勝ち目なんて無いじゃないですか…」 自分と二日さんを見比べて言う三日。(特に胸を) 三日がそう言うのも分からんでも無い。 実際、見た目的にも三日をパワーアップさせた感じだからな、二日さん。 性格は正反対だが。 「失点の失点ですね…」 それを見た二日さんが冷たく言い放つ。 「どのような相手であろうと自らの幸福を諦めるなど、緋月家の娘にあらざる態度…。自身の幸福の為なら全てを叩き潰しなさい踏みつけになさい蹂躙なさい!相手が肉親だろうと!友人だろうと!恋人だろうと!自分だろうと!」 今までにないテンションの二日さんの言葉に、三日の表情が消える。 「…はい、潰します。全ての喜びを怒りを哀しみを楽しみを。相手が例えお兄ちゃんだろうとお姉様だろうとお母さんだろうとお父さんだろうと朱里ちゃんだろうと御神くんだろうと私自身であろうとも…!この幸福を永遠にするために!!!!!!!!!」 ガリ、とナイフを握る三日の手に力がこもる。 「いやいや、そこで自分まで潰しちゃ駄目だよね?」 くしゃ、と俺は三日の頭を撫でる。 「おねーさんもあんまり妹さんをいじめないでやって下さいよ。ウワキなんざする気もさせる気も無いンでしょう?」 三日を撫でながら俺は二日さんに言った。 「それくらいの仮定と覚悟が無くして人を愛することなどできないでしょう…?何しろ恋は戦争、ですから…」 「恋はまったり進行、とも言いますがねー」 ハンバーグを頬張る俺の言葉に怪訝そうな顔をする二日さん。 「誰の言葉ですか…?」 「俺の言葉です」 無駄にきりっとした表情で答えてやる。 「それはそれはそれは……オメデタイ、ですね…」 明らかに言葉通りでは無い表情で二日さんが俺を見る。 なんつーか木から百回くらい落ちたサルでも見たような顔だ。 「ところで義弟くん」 唐突に話を変える二日さん。 167 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23 03 05 ID 3YlMb2N3 「何でしょう?」 「学校での三日の具合はいかがでしょうか…?」 「具合、ですか?健康状態に関しては、特に問題は無いようですね。ただ、体力は相変わらず無いようなので、栄養のつく物を食べさせてはいますが…」 「いえ、そちらでは無く、ベッドの上での…」 「まさかの下ネタ!?」 この人、先ほどの恰好といい、微妙にオヤジ臭いな! 「それで、実際のところはどうなのですか…?男女の仲になったからには、当然そうしたこともしているのでしょう…?ねぇ、三日…?」 えらい冷たい流し眼で三日を見る二日さん。 「はひぃ!」 二日の口調には相変わらず穏やかな中に反論を許さない空気があり、三日は硬直する他無い。 「ま、やることはやってますね。キスとかキスとかベロチューとか。最初の一回は白昼堂々で公衆の面前だったので、さすがに先生方から注意を受けましたよ」 「と、いうことはそれ以上のことはやっていないということですね…。私にも欲情する様子はありませんでしたし、もしかして貴方―――」 「紳士ですか?」 「チキンですね」 「……」 今日会ったばかりの相手にひでぇこと言われた。 「……褒め言葉として受け取らせていただきます」 俺は渋い顔になりそうになりながらもそう言った。 もし二日さんを襲ってたらnice boatな結末しか思い浮かばないから、本音ではあるのだが。 チキンで死亡フラグを避けられるのなら、チキン万万歳である。 「ああ、それとも女性に対しては勃たない人ですか?あるいは男性に対してしか欲情しないとか?父親の性癖を考えるとそちらの方が―――」 「……」 人の肉親を遠慮なく悪し様に言う二日さん。 どうにも、人がイラっとくるポイントを突いてくる人だ。 フォークを握る手に、少しだけ力がこもる。 「誤解ですよ。俺はただ、そう言うのが顔に出ない性質でして」 正直俺にしては珍しくかなりイラついているが、ここはサラっと流しておこう。 何か、さっきから三日もビクついてて静かだし。 ムカついたからって怒りを露にしたら、三日を無駄に不安にするだけだ。 ここはむしろ怒った方が負けだろう。 恋人の身内に対しては、心象は悪いより良い方が良いし。 「そう言えば義弟くん…?夕食を作る前に少々、貴方の部屋を見させていただいたのですが…」 二日さんがこれまた唐突にそんなことを言った。 自分の家のようにくつろいで下さいとはよく言うが、それを本当に実践してる人だ。 …今さら言うようだけど、そもそもこの人はどうやってこのウチに入ったんだろうか? 「ベッドの下の春画の類を全てゴミに出させていただきました…」 二日さんの言い回しに、一瞬ワケが分からなくなる。 「シュンガって…」 「いわゆるエロ本です」 ベッド下に隠してた俺の素晴らしきコレクションを捨てたと申すか! 「一通り見させて頂きましたが…、童女から熟女、セーラー服から和服、二次元から三次元まで、随分と節操無い系統の本を揃えましたね…」 「ンなこと別にどうでも良いじゃないですかい…」 何とかツッコミを入れるが、何か冷や汗はダラダラである。 俺のコレクションが!?って言うか俺のプライバシーが!? 「ああ…、でも、幾分かの共通項はありましたね…。表紙や内容から察するに、貴方は髪の長い女が好…」 「ごめんなさいマジすいませんもう勘弁して下さい」 よりにもよって三日の眼の前で自分の性癖を明かされるって、どんな拷問ですか。 その彼女は顔を真っ赤にしながらも食い入るように俺を見てるし。 「…御神くんは私以外の女で欲情するなんて…」 訂正、三日は顔を真っ赤にしながら嫉妬のこもった視線を俺に向けている。 …ドン引きされなかっただけマシだが、キツいことには変わりない。 知らん内にコレクションまで捨てられてるし、俺のプライバシーがガシガシ浸食されとるし。 ま、まあたかだか本だけどね! 168 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23 04 22 ID 3YlMb2N3 「まぁ、義弟くんにはあんな春画などこれからは必要ないのでしょう…?」 何でもないような口調で仰る諸悪の根源二日サマ。 居直り強盗よりも性質が悪い台詞だが、一体どういう意味だろう。 「代わりに妹を使えば良いじゃないですか…」 …は? 「三日なら、性欲のはけ口としては適切で手頃でしょう…。この娘にあれらの本にあるようなコトをさせれば良いではないですか…。やり過ぎれば壊れてしまうかもしれませんが、あの娘の体など私には関係の無いことですから…。好きに好きなだけお使いなさいな…」 自作のハンバーグを口にしながら、あくまでも優雅で穏やかに二日さんは言った。 まるで、三日が目の前にいないかのように。 どうにも、楽しくない態度である。 いやまぁ、確かに、俺だって性欲はある。 三日を抱きたいと思うことだってあるさ。 けれど、ただそれだけの為の相手と言わんばかりの言い回しは好きじゃない。 ましてや『関係の無い』なんて ましてや『壊す』なんて。 そんな言葉、好きじゃないし、許し難い。 「俺がアンタの立場なら―――」 普段糸目にしてる目つきが自然と鋭くなるのが分かる。 「身内を性欲のはけ口と認識するような奴を生かしちゃおかないでしょうね」 俺は、努めて軽い口調で続けた。 「ふう、ん…」 俺の言葉を聞いた二日さんが、スッと目を細めた。 「軽く叩きつぶしたと思ったのですが…、中々どうして生意気をやってくれますね」 虚無の色をした二日さんの目が、俺を見つめる。 うわぁ… こりゃ怖いわ。 ぶっちゃけ感情とか全然見えない目なんだけど、その代わりに問答無用で圧倒する威圧感がある。 隣で三日がガクブル震えてるのも良く分かる。 こりゃトラウマになるや。 そうして二日さんはカエルを睨むヘビのように俺を見つめていたが、やおら唇を動かした。 「加点」 はい? 「どれだけ引っかき回してもまともに反抗しないので単なる木偶の棒かと思ったら、そうでも無いようですね…」 クスクスと口だけで笑いながら、二日さんは言った。 一体何だって言うんだ? 「義弟くん、自分で気づいてましたか…?私が妹を『性欲のはけ口』と言った時、貴方はとても良い顔をしていましたよ…。とても良い怖い顔を、ね…」 二日さんが続けた。 「正直、私が扇情的な恰好で表れて何の反応もしないような殿方が女性と、ましてや妹と真剣に交際しているというのは半信半疑でしたが、まぁ、そうでも無いらしいですね…。三日も苦労しそうではありますが…」 ああ、あの痴女みたいなカッコはあれで意図があったんだ。 どんな対応取っても地雷だった気がするけど。 「さて、私はそろそろお暇させていただきますか…」 いつの間にか食事を終えていたニカさんは立ち上がった。 169 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23 04 45 ID 3YlMb2N3 「もう暗いですし、お送りましょうか?」 「お気遣いなく…。三日と違ってこれでも自分のことを守る心得ぐらいはありますもの…」 俺の申し出を言葉だけはやんわりと断る二日さん。 心得、というのは武術の類だろうか? 「それはまた…見てみたいような見たくないような」 二日さんの闘いを想像して言う。 とんでもなくえげつないやり方をするに違いない。 「見せて差し上げますよ…。もし、あなたが妹を大切にしないようなことがあれば、ね…」 そう言ってにこぉ、と二日さんが口を三日月に開いた。 「それじゃ、見る機会は二度と無さそうですね」 俺の口から、思ったよりスッとその言葉が出た。 「期待してますよ、義弟くん…」 そう言って立ち去ろうとする二日さん。 「…あ、では私もそろそろ…」 それに続こうと立ち上がる三日。 「ああ、義弟くん…。今日はソレを置いていきますね…」 しかし、動き出そうとする三日を指さして二日さんは言った。 「生意気を言うようですが、最愛の妹さんをソレ呼ばわりはどうかと思いますよ?」 「それは誤解です…。私が『愛』と言う言葉を使うのは1人だけ…。まぁ、三日にも愛着程度はありますが、ね…」 俺の苦笑に穏やかな口調で応じる二日さん。 「それでは、また…。今度会う時が最期にならないことを、祈っていますよ…」 そう言って、二日さんは颯爽と去って行った。 170 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23 05 44 ID 3YlMb2N3 「なんつーか、地味に嵐みたいな人だったなー」 バタン、と閉まったドアをたっぷり1分は見た後、俺は呟いた。 場を無駄に引っかきまわすだけ引っかき回したら帰ってった。 「…お姉様は、我が家の女王様ですから」 三日が言った。 その気持ちは超わかる。 でもまぁ…、 「女王様ではあっても、暴君では無いんじゃないかな」 俺は言った。 二日さんの行動を思い返すと、どうも一貫して俺を、妹の恋人を試していたように思える。 それはつまり、三日が心配だったんだと思う。 あまりにも弱くて脆くてまっすぐで、『愛着』のたっぷりある妹が。 「…はい。お姉様は一度敵と認めた人に対しては容赦ありませんけど、そうでない人にはそんなことありませんから」 三日も同意する。 さすが姉妹。お互いのことをよく分かってら。 「良いおねーさんだね」 こういうの、きょうだいのいない、親一人しか家族のいない俺にとっては素直に羨ましいと思う。 が、 「そこは全力で否定させてください!」 「そうなの!?」 色々台無しな、三日の一言だった。 いやさ、確かにさ、超スパルタンなおねーさんではあったけど、そこまで言わんでも良くない? 全力でなくても良くない? 今回って、『家族って良いな』的なオチじゃなかったんだ… そんなことを思っていると、 「…えっと、あの、ところで御神くん…」 三日がモジモジしながら言った。 「なにー?」 身長差のある三日に目の高さを合わせて俺は応じる。 「…あの、あの、今日は、今日から、名前で呼んでくれてありがとうございます。御神くんの方から言ってくれてとても嬉しくて、その…さしでがましいようなんですけど、あの…」 つっかえつっかえしながらも、自分の想いを伝えようと言葉を紡ぐ三日。 それを俺は笑顔で聞いている。 彼女が言いたいことを言えるように、それを邪魔しないように。 「…私も、…私も御神くんのこと名前で呼んで良いでしょうか!?」 三日が言いきった。 いつかの大桜でのような、全力がこめられた、頑張った一言だった。 思えば、大桜の下での告白を言うのにも、一年近くかかったんだよな、コイツ。 俺は、三日の頭をくしゃっと撫でて答える。 「俺の答えは、あん時から同じー」 その時は、まだ積極的な感情は無かった。 けれど、今はちょっとだけ違う。 一緒に居たいかな、と強く思う。 「良いよー」 だから、同じなのは言葉だけだ。 「はい!千里くん!」 三日は、そう花の咲くような笑顔で言ったのだった。 171 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23 06 08 ID 3YlMb2N3 数分後 「―――ところで、三日。今夜はマジでウチに泊まってくん?」 さっきからえらい嬉しそうにしている三日を見ながら、俺は思いだして言った。 「…はい、千里くん。お姉様のことですから、今夜は帰っても家に入れてくれないと思います。だから、今夜私が頼れるのは千里くんだけなんです、千里くん」 キラキラした目で答える三日。 犬だったらパタパタと尻尾を振ってることだろう。 「…千里くん家にお泊まり、千里くんとの一晩、千里くんと朝帰り、千里くん千里くん千里くん千里くん千里くん千里くん千里くん千里くん、ああ…!」 名前で呼べるのがよほど嬉しいのか、何度も俺の名を連呼する三日。 コイツが嬉しいのは良い事なのだが、状況はイロイロと微妙である。 「ええっと、あの、三日さん?けれども年頃の男女が同じ屋根の下で過ごすのってさ…」 俺がそこまで言うと、三日はポッと頬を赤らめた。 「…千里くんの、えっち…」 ぐはぁ! 「…千里くんのえっち千里くんのえっち千里くんのえっち千里くんのえっち千里くんのえっち千里くんのえっち」 「止めて連呼しないでお願いいやマジでお願いします」 今日1日の文脈的にその一言はキツすぎる。 三日的には俺の名前を呼びたいだけなんだろうが。 これはアレだ。 二日さんの罠だ! あの人からの最後の試験だ! 一晩三日と同じ屋根の下に置いて、俺の理性を試そうってハラだな! 「…今日も、千里くんのお父様たちはお仕事で帰られないのでしょう?」 「なぜ知ってる!?」 何だこの状況… 客観的に見ればかわいそうなクラスメートを一晩泊めるだけだってのに、どんどん追いつめられてる気がする。 「…遅い時間まで千里くんと愛し合っても、何ら問題はありませんよね?」 恥じらった顔でそんなことを言ってくれる三日。 『愛し合って』って、どう考えても言葉通りの意味じゃないよな! 「…私、その、そうしたことは初めてなので、千里くんが千里くんが千里くんが優しくしてくださると、嬉しいと言うか何と言うか…」 そんな三日を見て、ふと去り際におねーさんが言った一言が思いだされる。 ―――もし、あなたが妹を大切にしないようなことがあれば、ね…――― この場合、どうすることが三日を大切にすることになるんだ? 今日は諸々必要な物の用意が無いし、ああでも三日がそうしたいって言うならそうしてあげた方が良いのか…! もしかして、コレ、どんな行動をとっても地雷しか無いんじゃないのか!? しかも下手したら俺、二日さんに殺されかねないし! 思ったよりもハンパ無いぞ、二日さんの罠! あまりの状況に、俺の頭もパンクしそうになる。 「あんのヤンデレの娘さんのおねえさんがああああああ!」 俺はただ、そう叫ぶほか無かった。 172 名前:ヤンデレの娘さん 義姉の巻[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23 06 33 ID 3YlMb2N3 おまけ 夜風に身を任せるような優雅さで家路を行きながら、緋月二日は上品なデザインの携帯電話をとりだした。 慣れた手つきでキーを操作し、ある人物の番号を呼び出す。 携帯電話を耳に当ててすぐに相手と繋がる。 「もしもし、愛しい方…」 御神千里にも、ましてや妹にも聞かせたことの無い、甘く愛しげな声音で、二日は言った。 「私の愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい愛しい――――お父様」 父、と呼びながら、二日の声は最愛の恋人に対するそれだった。 そう、彼女は愛しているのだ。 血のつながった実の父親を。 自身の母という妻を持つ1人の男を。 「ええ、きちんとちゃんとお父様のお言いつけ通りに御神千里を、あの障子紙より弱い妹の最愛の恋人を、義弟を、つまり未来の家族を精査して検査して調査して参りましたわ…。え、君が言ったんだろうって?あらあら、そうだったかしら…?」 フフ、と嬉しそうに笑う二日。 嬉しいのだ、彼女は。 今この瞬間父と話している、繋がっているというその事実が。 母親では無く自分が、という現実が。 「結果は…、まぁギリギリ合格と言った所でしょうか…。まだ緋月家向きの殿方とは言い難いですが、少なくとも三日との交際の結果私たちまで不利益を被ることはない、と断言出来ますわ。…ええ、三日との交際は思いのほか真剣だったようです…」 嬉々とした表情で、二日は電話の相手に報告する。 そうしているうちに、自然と足元が躍るようなステップに変わる。 月に照らされて舞う二日の姿はとても美しく―――同時にどこか狂気的であった。 「正直あの三日のことだから、悪い男に引っかかったんじゃないかと心配…もとい期待していたのですが、そんなことは無かったようでした…。とはいえ、フフ…。中々に初心で、三日以上にいじめ甲斐がありそうな殿方でしたわ…。思いのほか反骨精神もあるようですし」 自分を睨みつける御神千里の顔を思い出し、二日は笑った。 三日のようなタイプも良いが、それなりに反抗してくれた方が彼女としては面白い。 「これで、私たち家族の、いえ私たち二人の憂いは無くなりましたわ。今日は母も仕事で帰りませんし、今夜はとてもとても楽しく激しく愛しく―――」 二日は笑う。 実の父を想って。 実の父との『この後』のひと時のことを想って。 「抱き合いまぐわい愛し合いましょう、お父様?」 もし、そう言って笑う二日の姿を見る者がいたとしたら、禍々しさを感じぬ者は居なかっただろう。 禍々しさを感じながら――――その笑みの美しさを否定できる者もまた、居なかっただろう。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/725.html
212 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 00 26 23 ID wHKFQGU5 -------- 都内の国道に沿って続く大通りを囲うようにして存在する店舗たちの すき間を通り抜け、小さな路地を進んだ先。 そこにはいわゆるメイド喫茶と呼称される喫茶店があった。 喫茶店の中には4つのテーブルとカウンター席があり、カウンターの内側では 男性ウェイターがグラスを磨いていた。 その男性ウェイターの苗字は南と言う。 アルバイトの店員からは南さん、恋人である女性店員からは南君、と彼は呼ばれていた。 大学を卒業後、彼はこの喫茶店に就職しウェイターの制服に身を包んでいる。 彼の仕事は主に軽食の調理、レジでの清算、その他の雑務全般であり、 接客業務などは行わない。メイド喫茶でウェイターが接客をするのはおかしいから、 というのがというのがその理由である。 店内には彼以外の男性従業員の姿はない。男店長が事務所の椅子に座っているものの、 足首と椅子が手錠で繋がれている状態では出歩こうにも不可能であるため、 結果的に喫茶店の男性従業員は南しか姿をあらわしていない。 カウンターで業務をこなす南の横には、メイド服を着た女性が付き添っている。 南と彼女はこの喫茶店で出会い、告白も喫茶店の中で行われた。 彼らの仲の良さは、副店長の女性に「お二人の結婚式はこのお店で行いましょうね」と 言わしめるほどのものであり、営業時間中も二人は付き添ったままの状態である。 二人の姿は店内にいるメイド服を着用したアルバイト店員の目にも映っており、 彼女達の心に焦りと羨望の情を抱かせている。 南の顔は、殴られたあとのように少しばかり腫れていた。 恋人と喧嘩したわけでも、女性店員の着替えをうっかり覗いてしまって殴られたわけでもない。 仮に後者であれば顔を腫らすどころか、病院の白い天井を拝み続ける退屈な日々を 送ることになるかもしれないが、まあそれは置いておくとしよう。 南が顔を腫らしている理由はこの数日に起こった出来事にある。 その出来事が分類されるべきジャンルは暴力的なものになる。 いや、ここでは「あえて」、という単語を付け加えるべきか。 男性が南に果たし状を叩き付けたときの光景は、時と場所をわきまえれば美しいものに見えなくもなかったからだ。 213 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 00 27 21 ID wHKFQGU5 午後5時、喫茶店のドアをカランカラン、と鳴らして入ってくる男がいた。 その男の特徴を表現するならば巨漢、というものがふさわしい。 南よりも頭二つ分高い身長に、肩の筋肉の盛り上がりで異常に広く見える肩幅をして、 セカンドバッグかと思わせるほどの大きさの靴を履いている男だった。 男は挨拶をしてくる店員に会釈をするとカウンターに向けて歩き出し、カウンターの向こうで グラスを磨いたまま顔を上げない南を見下ろせる位置で立ち止まった。 男は何も言わない。南も次に磨くべきグラスを手にとっただけで口を開かない。 男がやってきた理由、それは南と戦うためである。 別の言い方をするならば、喧嘩をしにきたのである。 南と巨漢の男は知り合いである。南が大学に籍を置くと同時に身を寄せていた 格闘技研究会で、巨漢の男は南の後輩をしていた。 その格闘技研究会では主に格闘技に関する情報を集めることを目的としていたが、 南と後輩の男は自らの身で技の実践を行っていた。 技の威力・精度を高めるための鍛錬方法や、対人戦闘において留意するべき事項を 記録することを当初の目的としていたが、次第に目的が変わっていった。 2人はどちらが強いのか、それを証明するために組み手を行うようになった。 技の練度を重視する南と、力が全てと豪語する後輩。 意見の異なる2人がぶつかり合うのは当然のことだったのかもしれない。 学生時代の2人の戦いは、全てが南の勝利という形で決着がついた。 ただ力押しでぶつかってくる後輩が、優れた格闘センスを持っているだけではなく 相手の心理・弱点をつく作戦までとってくる南に勝利することは不可能だったのだ。 だがその結末は後輩にとって面白いものではなかった。 勝ち逃げというかたちで卒業した南を追って、後輩の男はこの喫茶店にやってきた。 南と戦い、勝利すること。後輩の男にとって、それが一番重要なものだった。 214 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 00 28 42 ID wHKFQGU5 「おに……こほん、ご主人様、ご注文はお決まりですか?」 立ち尽くす巨漢の男に声をかけたのは、メイド服を着て長い髪をポニーテールにした背の低い店員だった。 彼女がいかにも声をかけにくそうな男に声をかけることができたのは、彼女が巨漢の男の妹だからだ。 巨漢の男の名前は、剛と言う。 妹はたくましい兄のことを、『兄』としてではなく『男』として慕っていた。 いじめられたときや困っているときにいつも助けてくれた兄の存在は、 彼女にとって何よりも大きな心の支えになった。 兄と一緒にいるだけで彼女の心は安心感に包まれた。 彼女は次第に兄から離れることを嫌がるようになり、兄のとなりにいていいのは自分だけだ、 と考えるようになっていった。 兄に他の女が寄り付かないようにするため、彼女はさまざまは行動をとってきた。 自分の友人や兄の友人に、自分達が義理の兄妹であると言いふらしたり、 そのうえ2人の間に既成事実が発生している、ということまで捏造して言いふらした。 そんな妹に対して剛は困った妹だ、という程度の認識しか持っていなかった。 結果、2人は仲のいい兄妹として先日まで過ごしてきた。 しかし、妹はその現状に満足していなかった。 兄をいかにして自分のものにするか、という懸案事項は常に妹を悩ましていた。 剛は野生的な勘に優れているので、妹が不審な行動をとったらすぐに気づく。 睡眠薬や痺れ薬などの劇薬を食事に混入したときにはそれを口にしようとはしなかった。 力づくでものにしようと考えたこともあるが、兄に敵うほどの人間はそうそういない。 ある日、実の兄を無力化するための方法を考えながら、ぼんやりと路地を歩いていた彼女に声をかける老人が居た。 不思議なことにその老人は彼女の浅ましい欲望を全て看破した。 驚く彼女に向かって老人は、「君のお兄さんに○○というメイド喫茶に南君がいる、と教えなさい。 そして、君もその喫茶店で働きなさい。そうすれば、君のお兄さんは永遠に君のものになる」と告げた。 胡散臭い台詞ではあったが、その老人の言葉はなぜか信用に足るように思えた。 彼女は老人の言うとおりに行動し、喫茶店のアルバイトを始めた。 彼女の言葉を聞いた剛は、翌日には喫茶店にやってきて、南に勝負を挑むようになった。 それが今から8日前のことになる。 現時点で南と剛が再会し、拳を交えた回数は既に8回。妹がこの喫茶店でメイド服を着た回数も8回。 そして今日、彼・彼女ら3人を巻き込んだ事態は9回目を迎えようとしている。 215 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 00 30 24 ID wHKFQGU5 剛は手元に視線を落とす南のうなじを見下ろしながら、こう言った。 「ウェイターさん。いつもの、お願いします」 その言葉に込められた意味は店内にいる全員が知っている。 つまるところ、今から喧嘩をしましょう、という意味である。 その言葉に一番の反応を示したのは南の横にいる女性店員だった。 彼女は一度剛の顔を睨みつけ、次に南の苦い表情を見つめると手で顔を覆った。 また恋人が傷ついてしまうと思い、涙を流しているのだ。 南の顔に張り付いている痣は昨日喧嘩したときについたものだ。 ちなみに、おとといまで南の顔には傷一つついていなかった。 では、なぜ昨日南は不覚をとってしまったのか? その原因は自分の恋人の女性にあると南は考えている。 彼を責めないでほしい。自分の油断を恋人のせいにするのは彼にとって本意ではない。 しかし、勤務中かまってもらえないからという理由で、8日前から前例に無いペースで 精力を搾り取られている南の体力はガタ落ちしており、それが昨日の不覚を招いた。 昨日はかろうじて勝利を収めた南だったが、昨晩は泣き続ける恋人をあやすために 夜通し起きていたため、現在の彼のコンディションは赤一色に染まっている。 だが、南の体に宿る闘争本能は燃え尽きてはいなかった。 南の体の奥底から力が沸き始め、全身の血流を活発化させる。 彼はグラスを食器棚に納めて手を拭うと、肩を震わせる恋人の肩に手をやった。 「南君……」 「大丈夫。今日は怪我なんかしないからさ」 南は恋人の髪を撫でた。 言葉と仕草で彼女を励ますのが、南にできる精一杯のことであった。 喫茶店の前の路地で、2人の男が向かい合って立っている。 中肉中背の男は腕を垂らして構えを見せていない。 もう1人の筋骨隆々とした男は豪腕を見せ付けるように腕を組んでいる。 「眠そうですね、先輩。今日のところは日を改めましょうか?」 「慣れない敬語なんて使うな。いつもどおり喋れ」 「まあ、そう言わずに。僕の敬語を聞くことができるのは、これが最後なんですから」 南は目を閉じると、かぶりを振りながらため息を吐き出した。 「残念だが、お前が俺を敬わなくていいようになるには10年早い。 せめて言葉遣いだけでも馴れ馴れしくするのを許している俺に甘えろよ」 「それじゃあ、目いっぱい先輩の胸を借りるとしましょうか。 下手すれば借りたまま失くしちゃうかもしれないから、気をつけてくださいね」 剛は喜色満面の笑みをつくった。 その顔を見て南も笑おうとしたが、笑えなかった。 彼の心には、余裕など微塵もありはしなかったからだ。 216 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 00 32 11 ID wHKFQGU5 2人が戦いを始める合図は存在しない。 どちらからともなく襲い掛かり、殴り、蹴り、叩き伏せるだけである。 この日、最初に仕掛けたのは剛であった。 咆哮をあげながら全力で駆け出す巨体は、南の前に立ちはだかると、拳を振りかぶった。 人間のものとは思えないほど巨大な拳が向かう先は南の顔面。 その場に立ち尽くしたまま動かないウェイターは、殴られ吹き飛ばされる―― かと思われたが、悲鳴をあげて後退したのは殴りかかった剛であった。 見ると、南はその場から一歩踏み出した状態で右手を突き出している。 剛の打ち下ろしの一撃に合わせたカウンターである。 「ちっ……やっぱ無理か」 「そんなワンパターンじゃ、結果は変わらないぞ」 「さて? ……そいつはどうかな!」 剛は体をひねると、大振りの右回し蹴りを放った。 それは標的の首から上を吹き飛ばすためのものだったが、即座にしゃがんだ南には当たらない。 南は地を這う右足払いを放つと、体勢を崩した巨体の顔面を全力で蹴り上げる。 続けて放たれる足刀をみぞおちに受けて、巨体が地に伏せた。 冷徹な声が、せき込む巨体の男に投げかけられる。 「どうした? もう終わりか」 「っへへ……まだまだ!」 立ち上がると、剛は力任せの攻撃を繰り出す。 そのことごとくに、南はカウンターを合わせていく。振り回される拳を払い、かわし、急所をつく。 一瞬の溜めの後に放たれる前蹴りに対しては、体を入れ替えて前進し飛び膝蹴りを顎に穿つ。 長い間戦ってきた剛の攻撃を見切ることは、南にとってたやすいものだった。 決して油断できる攻撃ではない。直撃を受けたら骨の数本は折れてしまいそうなものばかりなのだ。 剛が立ち続ける限りその攻撃が止むことはない。 決着をつける方法はただひとつ。巨体が地面に沈み動かなくなるまで打ち続けること。 それすらもたやすいものであったはずだ――南のコンディションが万全ならば。 剛の放った右ストレート。その軌道もスピードも南の目には写っていた。 だが、ただでさえ神経をすり減らすカウンターは南の体力まで削っていた。 ストレートに合わせたフックが剛の顔面に当たる。だが、当たっただけで振りぬくまでにいたらない。 南の体力に限界が近づいていた。彼のスタミナに問題があるわけではない。 連日繰り返された恋人との情事によって、彼のスタミナはエンプティラインの目前にまで減っていたのだ。 217 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 00 35 03 ID wHKFQGU5 (あと一撃で決めないと、やられる) と南は感じていた。 自分が全力の一撃を放てるのは、あと一回が限度。ならば、渾身の一撃で剛を倒すしかない。 剛が左手を真横に振りかぶる。次の攻撃はフックだ、と南は見切った。 巨体のわずかなひねりを感じ取った南は、ためらうことなく右の拳を全力で突き出した。 ぐきり、という音が空気と右手の骨を通って脳に届いた。 確かな手ごたえ。これでまた、自分の勝利だと確信した。 目の前にいる剛の巨体が段々と沈んでいく。だが、そのときにおかしなものが見えた。 剛の口の端が吊り上って、顔が愉悦を形作っていたのだ。 (なぜ、笑っている――?) その疑問を浮かべた次の瞬間、南は内臓に衝撃を受けた。 呼吸が止まり胃が締め付けられ、喉の奥から生暖かいものが飛び出した。 たまらず顔を伏せた南の目に飛び込んできたのは、太い腕だった。 剛の太い腕の先端についた拳が、自分の腹筋に突き刺さっている。 (そうか――) あえて自分の最後の一撃を受け、至近距離での一撃を放つ。 それこそが剛の作戦だったのだ。 脱力して地に伏せた南を見ながら、剛は震える膝を押さえつけていた。 ここで立ち続けていれば、夢に見ていた勝利を掴むことができる。 倒れたら、きっと起き上がることはできない。この勝利はおあずけになってしまう。 だが彼の膝は勝利より、休息を一番に求めていた。 剛の膝が折れる。そして地面に張り付いたように動かなくなった。 動け、と強く念じても剛の腰から下が動くことはなかった。 しばらく間を置いてから、彼の背中が地面に着いた。 次第に、意識が遠くなっていく。 必死で目を閉じることに抗う剛の目に、カチューシャを髪に差した妹の顔が映った。 妹は泣いていた。ぼろぼろと涙を流して、自分を見下ろしている。 一粒の雫が落ちてきた。剛の目に向かって、まっすぐに落ちてくる。 その様子は、剛の目からはスローモーションに見えている。 目前に雫が迫ってきたところで、剛は目を閉じ――そのまま、彼は眠りに落ちた。 2人の戦いは、この日初めて相打ちという形で決着が着いた。 ------ 222 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 04 31 24 ID wHKFQGU5 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2人の戦いから3日が経った。 今、南は朝霧の立ち込める寺にて1人で座禅を組んでいる。 剛との再戦に備えて精神集中をしているのだ。 あの対戦のあとで南は2日間の有給休暇をとった。 それは体の傷を癒すためというよりは、恋人と一時的に離れることが目的だった。 剛との戦いで相打ちに終わった理由は、スタミナの不足である。 その問題を解決するためには恋人との情事を控えることが一番だと南は考えていた。 だが、後ろ髪を引かれる思いをしたのも事実だった。 恋人に2日間会えないということを告げたとき、彼女は世界の終わりが来たときに浮かべそうな表情をした。 立ち去ろうとしたときは、腰にしがみつかれて制止された。 それでも南は彼女を振り払った。一緒にいると、どうしても彼女を抱きたくなってしまうことを自覚していたからだ。 だからこうやって離れた土地にある寺にやってきたのだ。 今日は剛との再戦当日。久しぶりに喫茶店へ出勤することになる。 同時に喫茶店にいるであろう恋人にも再会できる。そう思うと南の心は躍った。 この2日間、南は恋人のことばかり考えていた。 すぐにでも帰って彼女を抱きたいと思っていたが、剛の笑い顔がその思いを止めた。 戦うたびに自分に倒されていた後輩。その彼の顔が勝利を確信した表情を浮かべたときの悔しさ。 それを思い出すたびに彼は自分を強く律した。 手元にある携帯電話が振動し、6時を告げた。 今から向かえば8時には喫茶店に到着する。 寺の住職に挨拶をしてから、南は愛用のバイクに跨った。 向かう先は、決戦場――自身と恋人が勤めるメイド喫茶。 周囲に立ち込める朝霧を乱さぬつもりでスロットルを回し、南は寺を後にした。 223 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 04 32 25 ID wHKFQGU5 ・ ・ ・ 喫茶店に到着したのは、まもなく8時になろうかという頃合だった。 店の壁に張り付かせるようにバイクを停めてヘルメットを脱ぐ。 そのとき、ヘルメットを被っているときには聞こえなかった音が耳に届いた。 音がする方向は、店内。そこから騒がしい音がする。 ドン、ドン、という太鼓を打ちつけるような音と、 「が、ぁっ、そんな、なんでぇ! があっ!」 という男の叫び声が特によく聞こえた。時折、女の声がそれに混ざる。 「あんたの……せいで、…なみくんが、いなく……なったの、よ」 聞き覚えのある声だった――というより、忘れられない声だった。 南の最愛の恋人の声である。 しかし、普段南が聞いているような声とは違った。 暗くて、耳にこびりつくような恨めしげな音階をしていたのだ。 さらに耳をこらすと、別の女の声もした。 「や、やめて…………おにいちゃんを、ゆるして……」 その声は最近入ってきたアルバイトの女の子の声に似ていた。 そう、たしか――剛の妹の女の子だ。 何かを打ち付けるような音と、男の悲鳴と、自分の恋人の声と、剛の妹の声。 それだけ整理しても、店内で何が起こっているのか分からない。 南は店内を望める窓から中の様子を伺って、次の瞬間目を疑った。 自分の恋人と、剛が戦っていた。 いや、一方的に剛が押されている状況は戦っているというより、リンチのように見えた。 剛が力なく拳を振り上げると、その瞬間に恋人の握る箒が動いて拳を突く。 メイド服のスカートが広がると同時に箒が回転すると、次の瞬間には剛は顎を打ち抜かれて巨体を揺らす。 その一方的な光景を涙目で見つめる少女は、剛の妹で間違いなかった。 剛が膝をついた。首はうなだれて、白いTシャツには血がこびりついている。 メイド服に返り血を付けた女が巨体の男のすぐ目の前まで近づいた。 右手には赤く染まった箒が握られている。その箒が彼女の頭上に持ち上がる。 左手で剛の顎を持ち上げると、箒の先端が剛の眼窩を貫ける位置に構えられた。 そこまで目にしたで南の足はようやく動いた。 勢いよくドアを開け放ち、店内に踏み込む。血の匂いが鼻をついた。 恋人の後姿を確認した南は、彼女を止めようとした――が、何をしたらいいのか思いつかなかった。 奇妙な感覚だった。 勢いよく迫るトラックを止める方法を探しているときのような圧迫感と無力感を覚えた。 その威圧感が最愛の恋人の体から放たれているものだと南が気づいたのは、振り向いた彼女の目に 狂気が宿っているのを察した瞬間だった。 224 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 04 33 42 ID wHKFQGU5 血に濡れたメイドは、恋人の姿を目にした瞬間に巨体の男から興味を反らした。 離れた位置にいるもう1人のメイドがそれを見て、必死な様子で巨体の男を奥に引っ張っていく。 小柄なメイドと血に濡れた後輩の姿が店の奥に消えた時点で、南は変わり果てた恋人に声をかけた。 「ひ、久しぶりだな」 「……ねえ、みなみくん。どこ、いってたの」 まったくと言っていいほど唇を動かしていない様子であったが、聞き逃すことなどできそうもない声だった。 「ああ、えっとだな……その……」 「……なんで、どもるの、みなみくん。 どうして、どうして、ねえ、ねえ、なんで、なんで」 首が左右に揺れると同時に、血に揺れたカチューシャのフリルも揺れる。ゆらゆらと。 「あ…………ち、違う」 「なにがちがうの。わたし、なにかまちがったこといったかな。 みなみくんがいなくなったのに、しんぱいしちゃだめかな」 血に濡れた箒は離さぬまま、にじりよってくるメイド服の女。 その女が自分の恋人だと南は理解していたが、足は彼女から遠ざかろうと後ろにさがる。 「なんでにげるの。わたしが、こわい、の」 「違う! 俺はお前のこと、その……好き、だ……」 「じゃあ、はやくおそうじしよう。ふたりでいつもみたいに。 わたしがゆかをはくから、みなみくんがガラスをみがいてね。 そのつぎは、ひとりがふたつずつテーブルをふこうね。 トイレそうじはそれぞれべつべつだよ。 さいごはカウンターのおそうじしよう、ね」 そこまで言い終わると、彼女は目を閉じて天井を見上げた。 「うれしいな、みなみくんに、好きだっていってもらえた。 ずっと、ずっと、ずっとききたかったのに、ふつかもきいてなかったんだもん。 でも、がまんしたかい、あったかも。いま、す、ご、く……ふふふ、うれし…… あはははは、うふふふふ、きゃはははは、くひひひひひ」 顔を天井に向けたまま、返り血を浴びたメイドは笑い出した。 その様子は、欲しかった玩具をようやく与えられた子供のように無邪気であった。 しかし、彼女から放たれる狂気が消えたわけではなかった。 狂気に気圧され、南は後ろにさがり続けていた。が、その背中がドアに着いたところで下がれなくなった。 来客を報せるためのベルが、カランカランと心地よい音を立てた。 「あれ……みなみくん、にげてるの。 そんなにとおくにいっちゃだめだよ。へんなむしがくっついちゃうよ。 みなみくん、かっこいいから、へんなおんながよってきちゃうよ」 「いや……逃げてるわけじゃなくて……」 「だめだよ。もう、わたしといっしょじゃなきゃ、そとにだしてあげない。 ずっと、ね。ずーーーーっと、わたしといっしょにいるの」 南は確かに見た。恋人の目の奥に宿る狂気と、闇がさらに濃くなっていく様を。 「まずは、おそうじ、しなきゃ、ね。みなみくんのからだを」 225 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 04 35 55 ID wHKFQGU5 白いエプロンに赤い斑点をつくったメイドが南の元へと近づいていく。 彼女はにこにこと笑っていた。狂気を宿した目を大きく開きながら。 ほっそりとした手が南の肩へと近づいていく。 その手には返り血がついているというのに、変わらぬ美しさを保っていた。 あまりに場違いな美しさだった。だから、南は無意識のうちにその手を払った。 そして、呆然とする彼女と勝手に動いた自分の手を見比べながら南は狼狽した。 「ごめん! その、つい……」 「……やっぱり、そうか。みなみくん、わたしからはなれちゃったからよごれちゃったんだね。 わたしにまかせて。みなみくんの、こころとからだ、ぜんぶきれいにしてあげる。 なかも、そとも、めんどうみてあげるよ。……だから、ちょっとだけよこになって」 南は警戒心を解いていなかった自分を褒めた。 もし油断していたら、恋人の箒に足を払われて倒れ付していたからだ。 振り回される赤い箒を避けるため、南は距離をとった。 距離をとっても彼女の放つプレッシャーが緩むことはなかった。 彼女の放つ威圧感は、店内全体を覆っていた。 そのせいでどこにでも彼女が存在しているような錯覚を南は覚えた。 「はやく、きれいにしなきゃ、よごれちゃうよ、みなみくん」 彼女の放つ一言一言がこだまのように聴覚を混乱させる。 南は眩暈を覚え、一瞬目を閉じた。次に目を開いたときには、恋人の笑顔が目前にあった。 頭を伏せる。すぐに彼の頭上を箒が通り過ぎた。 サイドステップでその場を離れ体勢を立て直そうとするが、目にも止まらない速さで 振るわれる箒はそれすらも許さない。 女の持つ箒は南の居た地点を確実に突いて来る。 鼻先をかすめる一閃は、一撃で気絶に至らしめてしまう速度で振るわれていた。 南がテーブルを盾にして構えた。ただの箒であればテーブルを破壊することなどできないはずだ。 ――と考えていた南の予想は別の意味で裏切られた。 テーブル越しに一度衝撃が伝わった次の瞬間には、南の体はテーブルごと後方に飛んでいた。 壁まで飛ばされ、背中を強く打った。 顔を上げると、メイドが箒を振り上げて駆け寄ってくるのが見えた。 振り下ろされる箒の速度を見切り、カウンターのタイミングを掴む。 そらした頭をかすめて箒が振るわれる。再度攻撃が来る前に箒を掴んだ。 「あっは、はははは」 しかし、振り下ろされていた箒は南の体ごと彼女の頭上に持ち上げられた。 自分の目に見えている光景の不自然さを理解する前に南の体は放り投げられ、床に叩きつけられていた。 南の頭の中はこの理不尽な状況を理解するためにフル回転していた。 恋人の突然の変貌と、手も足も出させない圧倒的な彼女の戦闘能力。 いかにして事態をひっくり返すか、それを考えても何も浮かばない。 濁流に歯向かう力は、攻撃を受け続けた南には残されていなかった。 226 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 04 38 25 ID wHKFQGU5 「お、そ、う、じ、しま、しょ」 床に伏せる南に対して、恋人の振るったバケツの中身がぶちまけられた。 透明な液体だった。顔を伝うその液体の粘度は水道水のものではなかった。 唇を舐める。すると苦味が味覚を刺激した。 「おい、これって、台所の洗剤じゃないか!」 「そうだよ。いまからおそうじするんだから、せんざいはひつようでしょう」 メイドは南の体をうつぶせにすると、両手と両足に手錠をかけた。 もう一度ひっくり返して仰向けにすると、手に持った箒をシャツの胸元からジーンズの裾まで挿入した。 南が何かを言おうとしたが、その寸前に彼の恋人の手によって箒が動いた。 箒の両端を掴み、一気に服を引き裂いたのだ。 彼女の腕力によってベルトの金具までが破壊されて、南は見るも無残な姿に変貌した。 「じゃあ、こんどはあわで、あらってあげるからね」 そう言うと、彼女は今度は自分の体にバケツの中身を被った。 そして身動きの取れない南の半裸の体にのしかかり、細かく動き始めた。 両手の五指をそれぞれ絡みあわせて、体を上下に動かす。 「わたしは、いまスポンジだよ。 よごれちゃったみなみくんは、こうやってあらってあげないと、いけないから」 実際にその通り、彼女の動きは南の全身をくまなく洗うためのものだった。 頬にほおずりし、腕・足を絡ませて、胴体をこすりつける。 仰向けの状態で全ての箇所を洗い終えると、今度はうつぶせにする。 背中に両手が当てられるのを南は感じ取った。 その手は肩の上から背中を通過し、臀部まで動く。 足の指は、さすがに彼女にも難しかったようだった。 だが、次に彼女がとった行動は南の予想を上回るものだった。 スカートに溜まった泡と洗剤を口に含み、南の足の指を咥え込んだのだ。 咥えるだけでなく、さらに舌までも絡めてきた。 指の一本一本を舐め回し、爪と指の間を舌先で刺激してくる。 その動きが終わった頃には、南の体で洗われていない部分などなかった。 ただ、一つを除いては。 227 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 04 41 00 ID wHKFQGU5 「それじゃあ、つぎはここだよ」 そう言った彼女の手は、さらけ出されている南の陰茎を掴んで上下になまめかしく動いているところだった。 先ほどまでの動きで彼女の体の柔らかさを感じていた南は、男性自身をしっかりと硬くさせていた。 その状態に加えられる恋人の絶妙な愛撫は、たちまちのうちに南の射精欲を高めていく。 「ああん……みなみくんの、にがくって、おいしいよお…… まいにち……ほしかったのに……んむ、ひどいよ、みなみくん……」 肉棒のすぐ近くで口を開く恋人の声が南の頭に伝わってくる。 それだけの刺激でも射精してしまいそうになるほど、南は高ぶっていた。 「もうっ……やばい……」 と、南が漏らした瞬間、恋人の愛撫が止まった。 絶妙なタイミングでの寸止めだった。 それは、付き合ってから先日まで培ってきた彼女の経験が成すものだった。 もう一度何かの刺激を加えられたら、射精してしまいそうな位置に熱いものがある。 物欲しそうにしている南の表情を見て取った恋人のメイドは、嬉しそうに笑った。 それを見て南は続きをしてもらえるのかと思ったが、彼女が手に持っている物を見て驚愕の表情を浮かべた。 「お前、それって……」 「さいごはあ、そうじきでーす。 しんぱい、ないよ。ちゃんと、すいこみぐちは、そうじしたし。 くちのおおきさも、みなみくんのと、おなじぐらいだから」 掃除機のスイッチが入れられた。 ヴィーン、という規則的な音が律儀にも店内の空気を振動させる。 「ばっ、馬鹿! お前、やめろ!」 「やー、だー、よー」 南の肉棒を包み込むかたちで掃除機のホースが入れられた。 先に恋人が言ったとおり、ホースは勃起した南の肉棒と若干の誤差を残して適応していた。 若干の誤差、それは南の陰茎と亀頭の大きさがホースの直径より少し大きかったということ。 そのため、ホースが上下に動かされるたびに南の肉棒は擦れた。 「が、あ、あ、ぁぁぁ……」 いきなりこのようなことをされたらたちまちのうちに肉棒は縮んでいくだろうが、 寸止めされた南の射精欲はまだ健在だった。 掃除機相手に射精してたまるものか、というせめてもの抵抗が南の全てだった、が。 「んふふー、……えいっ」 恋人が南の陰嚢を刺激してきた。 その刺激は陰茎とは別方向からのものであり、巧みな手つきによって南の自制心を崩していく。 「うっあ! 頼む、抜い、って、くれ!」 「だーーめ。おそうじはしっかりとしなきゃ、ね」 掃除機の出力が『強』になった。騒音がますます大きくなり、肉棒を強く吸引される。 その間も陰嚢の刺激が止むことはない。 執拗な双方向からの刺激が続くうちに、南の中にあるスイッチが強制的に入れられ、射精を迎えた。 射精自体は興奮からではなく、痛みの拍子に起こったものかもしれないが、南にとってはどうでもよかった。 掃除機に射精してしまったという事実が、南の何かを破壊した。 ――その何かは、人としての尊厳であったかもしれない。 228 :ヤンデレ喫茶の床に、血が落ちる ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/05/05(土) 04 44 10 ID wHKFQGU5 ・ ・ ・ ・ ・ ・ それから数日が経ったある日。 都内某所にある大学の構内でこんな会話が交わされていた。 「知ってる? 格闘技研究会の、あのおっきいひと――名前忘れちゃったけど、退学したんだって」 「あ、そうだったんだ。最近見ないなって思ってたけど」 「でも、何で退学しちゃったのかな?」 「これは噂なんだけどね。大学に退学届けを出したあと、箒、箒、箒って呟きながら帰っていったらしいよ」 「なにそれ? 箒のお化けでも見たのかな?」 「意外と小心者だったのかもね。人は見かけによらないってやっぱりほんとだね」 「そういえばさ、その人の妹さんも一緒に退学したらしいけど、これ本当?」 「あー、知ってる知ってる。サークルの男どもが騒いでたよ。 うちの大学のミス・コンテスト優勝者が退学するなんて! って言いながら」 「もしかして、お兄さんについてってやめちゃってたりなんかして。 あー、いいなー。私も頼れるお兄さんが欲しかった。聞いてよ、うちの貧弱兄貴ってばさ――――」 ・ ・ ・ ところかわり、都内某所に存在する喫茶店にて。 「野菜ジュース、1つオーダー入ったぞー」 「うふふふふ……。かしこまりました、南君」 ヴィィィーーン 「ひいっ?!」 ガチャン! 「うわっ! どうしたんですか南さん。あーあ、グラス割れちゃったじゃないですか」 「あ……ごめん。つい、音に反応しちゃって……」 「音? なにか変な音でもしましたか?」 「いやいや! なんでもないよ。忘れてほしいな、なんて……あは、あははははは……」 喫茶店の床に血の跡がこびりついた日から、南はこんな調子である。 ミキサーの音に反応してしまうほどに彼の心を穿ったものとは何なのか。 事実を知るのは、当事者である南と彼の恋人と、店内を監視していた店長と副店長の四人だけである。 それ以外の誰にもそのことを知られたくないと、南は思っている。 同時に、自分の記憶からも消えてしまって欲しいと、強く思っている。 終 ------
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1004.html
322 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 19 07 ID hZWgCSrL 『痴漢とヤンデレ:エクスタシー』 平凡なサラリーマンとは、おそらく俺のことを言う。そう、この俺、『麻生忠雄(あそう ただお)』。 この現代日本の男の平均値を搾り出してみよう。ほら、君も俺の顔を思い浮かべることができるはずだ。 平平凡凡な顔、身体、運動能力。なにも秀でたところなんてありゃしない。社会の歯車でしかない二十六歳。 それなりの人生を生きて、それなりに死んでいく。そんな未来しか見えてない。 スリリングな生き方に憧れた若き日もあったように思うが、今ではもうそんなこと、忘れてしまった。 ……それにしても、俺は今いつも通りの満員電車に乗って通勤している。が、何かが変だ。 いつも通りではない。 揺れる電車の中、俺は一人の女子高生と密着状態にある。 その子は某名門女子高に遠くから電車で通っている娘らしく、俺は何度か電車内で見かけていたし、密着状態も一度や二度のことではない。 それはそうだろう。どの車両に乗るかは、意識的にせよ無意識的にせよ、だいたいは決まっているものだ。 その女子高生ははっきりといえば地味で、おとなしそうな少女だった。大柄でも小柄でもないのだが、オーラとも言うべき存在感にかけていて、体格よりも小さく見える。 髪は黒で、後ろで大きな三つ編みにしており、今は俺の胸をうっとうしくくすぐってくる。 顔はあまり眺めたことは無い。おそらく俺と同じ、平平凡凡なのだろう。眼鏡をしているという情報しか、俺の頭には残っていない。 制服の着こなしも地味以外の何もいえない。スカートは校則にきっちり準拠しているであろう膝丈。脚はハイソックスで覆い隠されている。 本来なら、俺は密着状態であろうがその少女になんの興味も示すことは無かった。 だが、今日は違った。 少女の背中に密着している俺だが、その首筋を見下ろしたとき、強烈なフェロモンを嗅ぎ取っていた。 そのフェロモンに当てられて、俺の理性に皹が生じたのだ。 ……その首筋、舐めたい。 323 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 19 38 ID hZWgCSrL いや――いけない。 俺は平凡なサラリーマン。そんな痴漢行為を働けば、いちやく変態サラリーマンの仲間入りだ。 せっかく婚約して同棲中の恋人もいるのに、俺は職とともに全てを失ってしまう。 ――そもそも、あいつがいけないんだ。 俺はフィアンセである、『一条美恵子(いちじょう みえこ)』を思い出す。今は俺の部屋にいるだろう。何をしているかは知らない。 「忠雄さん! ……こ、このいかがわしい読み物は一体なんなのですか!? わたくし、忠雄さんがこんなにいやらしい方だとは思いませんでした!」 ある日、俺の秘蔵の人妻本を発見した美恵子が叫んだセリフである。 一ヶ月ほど前から同棲を始めた美恵子は、真っ先に俺の部屋をガサ入れし、上記のものに類似したセリフを連発してあらゆるオナネタを捨ててしまったのだ。 曰く、「忠雄さん、わたくしという婚約者がありながら、なんですの! このいかがわしいサイトの観覧履歴は!」 曰く、「忠雄さん、このティッシュはなんでございますか! ゴミ箱を妊娠させるおつもりですか!」 曰く、「ああいやらしい! わたくし、このようないかがわしいビデオが世に出回っているなどとは、つゆほどにも知りませんでした!」 曰く、「わたくしの目の黒いうちは、不潔な行為を一切ゆるしませんわ!」 美恵子はつまり、俺にオナ禁を強要した。 ならば恋人なのだから、俺の下半身の世話を美恵子がしてくれるのかと思えば、その期待は間違っていた。 「まあ、まさか忠雄さんは婚前交渉をお持ちになろうというの!? この美恵子、そんな軽い女ではございませんわ!」 美恵子は、思うに、古風すぎるにもほどがあるのではないか。 いや、事実現代では珍しいほどの箱入り娘だ。しかし、ネットも大衆雑誌も無しの生活が、ここまでの堅物を生み出すのは予想外だった。 昔――俺が大学生のとき、当時高校生の美恵子の家庭教師をつとめたとき。これがきっかけで俺達は恋人になったのだが、俺はこの時点ではこれも魅力だと思っていた。 実際、美恵子のこういう世間知らずなところは俺は好きだ。 俺は箱入り娘の親に家庭教師を任命される(美恵子の父は、俺の大学の教授だった)程度にはまあ、高学歴というかインテリと言える人間だったので、美恵子とは知的な分野の話が異様に合った。 下品な外国文学の話ではない。日本の古きよき文学について、二人で話し合った。俺達は互いに惹かれあい、今に至る。 思えば、文学の話で結びついた俺達が性的なものの見解に相違があるなど、当たり前だ。 世の中、こういうことで別れてしまう、言うなれば『夢を見ていたカップル』がたくさんいるのだろう。 ……とまあ、こういう理由で俺は一ヶ月オナ禁であるので、性欲は十分すぎるほどに溜まっていた。 もちろん、美恵子のことは愛しているし、美恵子だってたぶん俺を愛している。――愛しすぎているくらいで、俺がテレビの女優をきれいだと褒めただけでそのテレビをスクラップにしたくらいだ。 325 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 20 12 ID hZWgCSrL その後、ストーカーや無言電話の被害でその女優が活動を休止したのは、偶然だろうか。文学的に考えると、美恵子の生霊が……? いや、ばかな。 とにかく、俺は目の前の地味な女子高生に、すさまじいまでに魅力を感じていた。 ごくり。唾を飲み込む。 いや、なにやってんだ俺は。美恵子のためにも、俺は善良なサラリーマンで有りつづけるべきだ。教授からたくされたあの箱入り娘は、俺以外の人間では手におえないだろう。 それに、美恵子は一人では生きていけない。あの性格では一生社会に出られはしない。俺が養ってやらないと、だめだ。 そう、ここで社会的地位を失うわけにはいかない。 と、ここで違和感に気付いた。 ちらちらと、女子高生が『下』を気にしている。 『下』? 俺は下を見る。 おおーっ!!!!??? NO! 俺の股間のビッグマグナムは見事に肥大化していて、少女の背中をつんつんとつついていた。電車が揺れるたびに、マヌケにも当たっている。 恥ずかしそうに顔を赤らめながら、少女は俺に態度で訴えた。 だ、だめだ……。 謝ろう。ここは謝るしかない。 しかし、無情にも電車の揺れは絶妙なタイミングで強化された。 「――うぁ!?」 倒れそうになる。まずい、何かに捕まらねば! 「んっ……」 ぽよん。……ぽよん? なんということか。おお、神よ。それほどまでに俺をスリリングな世界に導こうとしているのですね。 俺は見事に少女の胸を掴んでしまっていた。なんというか、柔らかすぎて一瞬別世界のものかと思った。っていうか、死んだかと思ってしまった。 その感触は、まさに天使。肉肉しいというか、俺の身体にはない女っぽさがどうしようもなく俺の興奮を促進した。 こういう地味な娘も、エロい身体してるもんなんだなぁ、と、なんだか感無量だ。 っていうかさ……ああ、俺、捕まったな。 今時さ、こういうセクハラ行為はな。すぐに警察行きのフラグが立つわけなんですよ。そうです。俺は人生終わりました。 皆さん、さようなら、さようなら! 326 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 20 43 ID hZWgCSrL ……と思ったが、ずっと少女の胸を掴んだまま放心していたにも関わらず、少女は何もしない。 後ろから顔を覗き込むと、ただ顔を赤らめてうつむいているだけだった。 ――俺の理性は崩壊した。 「――っ……!」 制服の上から、強く胸をもむ。少女は声にならないうめきを上げた。痛いのだろうか。 相変わらず柔らかくてとろけてしまいそうなエロい肉体だ。 股間のマグナムも、腰にすりつける。腰周りの肉も、ほどよくついている。気持ちが良い。 ぴくぴくと振るえる少女がなんだか可愛らしく、平凡なはずだった俺に眠っていた加虐心に火がつく。 制服の中に、下から手を突っ込み、ブラをずらして生乳を触った。 「はぅ……!」 手が冷たかったのだろう、少女はびくんと跳ねた。 周りの目を気にして見る。みな、背を丁度向けてくれている。俺達を見ている人間などいない。好都合すぎる。 俺は差し込んだ右手ですべすべの肌をひとしきり楽しみ、胸をちょいとつまんだ。 さらにうつむく少女。顔はゆでだこのように真っ赤だ。そんな少女にあまりに魅力を感じる。そうか、俺は変態だったのだな。 胸を、外側から円を描くように撫でてゆき、徐々に中心部に向かっていく。手触りからの推測だが、少女の胸には強いはりと弾力があり、なかなかのサイズながらもつんと上を向いている。 おそらく、俺の思ったとおりの場所――この円軌道の終着点こそが、少女のイチゴの生った場所なのだ。 「ひっ!」 しゃくりあげるように少女が小さく叫ぶ。その声は電車と、多すぎる人々の騒音に容易にかき消された。 俺の指が少女のピンクの果実に行き着いたのだ。色は見ていないが、どう見ても処女だし、なんとなくのイメージで、ピンクだとしておく。 乳首を指ではさみこみ、ちょいとひっぱった。 ぴくりと少女が反応した。 それに気をよくした俺は、くりくりと乱暴に弄ってみる。 「はぁ……ぁ……ぅ……」 あまりの羞恥心に、少女は興奮して息を荒くしていた。 乳首に刺激を与えるたびに、少女の口から声がもれ出る。 俺は、「感じてんのか? 淫乱な女だぜ」と言えるほど自分に自信は持っていない。 俺の手が冷たいからとか、屈辱だからとか、人前だからだとか、そういう羞恥心などの新鮮な刺激が少女を興奮させているのだ。 俺のフィンガーテクで少女が感じているなどとは、どうにも思えない。 が、それでも気分はいい。少女の反応は、痴漢もののAVで見たようなものよりよほど初々しくて可愛らしくて、エロい。 空いた左手も使おう。 327 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 21 13 ID hZWgCSrL 俺は大胆にも、少女の長いスカートをめくり上げ、少女のたっぷりとした尻を下着の上からつかんだ。 「んくっ……」 少女は脚を震わせて緊張を示した。拒絶の意か。 ならば、と、俺は胸を思いっきり乱暴につかみ、乳首を高速で擦り上げた。 「――っ!?」 ぴくんと少女の身体がはね、下半身への注意がそれる。その間に、するりと手を滑り込ませ、下着の中に手を差し込んだ。 もちろん、最初から急いで秘所に突撃などはしない。まずはその柔らかい尻の感触を味わうのが礼儀と言うもの。 左手で、丁寧に、ねっとりと、絡みつくように尻の肉をもみしだく。 直接触れる少女の尻はすべすべで、指に張り付くように肉質が見事な感触をかもし出していた。 「ぁぅ……ぅぅ……」 少女はもはや抵抗を示さず、俺にされるがままだ。上では乳首を弄られ、下では尻をもまれ。 おそらく人生でも最大級の屈辱だろう。 さて、肉感は味わいつくしたので、そろそろメインディッシュといきますか。 俺は左手をスライドさせ、股間に差し込んだ。 脚の付け根をすりすりと摩っていく。 「くぅ……ん」 少女の顔を後ろからまた覗き込む。あそこに触れる瞬間の顔が見てみたいからだ。 今の少女は、真っ赤な顔で、目を硬く閉じている。恥ずかしさに顔から火が出る勢いなのだろう。正直萌える。いや、燃える。 では、いただくとします。 「――ん――っ!?」 少女の茂みを探し出し、割れ目に指を当てた瞬間、少女の身体が大きくのけぞって口が開かれた。少女は声を抑えようと必死で、持っていたハンカチを噛んだ。 声にならない叫びが歯と歯の間から零れ落ちる。 ああ、いいよ、きみ。その大きさだと、周囲には聞こえない。 「ひぐ……ぁう……ひっ……!」 ちろちろと、弱い力で、じらすように花弁を弄くりまわす。 まだ本格的な性感帯は攻めない。ゆっくりと、反応をうかがいながらが良い。 ぐちゅぐちゅと、いやらしい音が響く。――実際には響いていない。周囲の騒音にかき消されている。 少女のそこは、既に濡れていた。まさか、俺の乳首攻めで本当に感じてしまったのだろうか。 いや、防衛本能というやつだろう。危険なときこそよく濡れるというらしいし。レイプの時が一番濡れるとも聞いた。 328 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 21 44 ID hZWgCSrL 少女は顔を上に上げて口を大きく開けて激しく息をしている。 肺から空気が押し出される感触があるのだろう。 そろそろいいか。と、俺はさらにその股間をまさぐり、小さな突起をみつけた。 「ん――!!!」 今までで最大の反応。俺がクリトリスをつまんだ瞬間だ。 少女は身体を大きくのけぞらせてびくびくと震えた。 おそらく、達してしまったのだろう。 早いな、つまらん。 俺はお構いなしに、クリトリスをさらに弄くりまわした。 「ひぐぅ……!?」 少女はついにこちらを向いて、抗議の目を向けた。初めて目が合った。 赤く染まった頬には、涙が流れ落ちていた。少女のその姿は、今まで見た誰より――美恵子より、美しいとさえ思った。 「イッたばかりなのに……!」とでも言いたげなその顔を無視しながら、俺は手をさらに加速させた。 「はぅ……あ、あぁ……!!」 少女の声が徐々に大きくなる。おいおい、周りに聞こえるぞ。 だが、誰も俺達を気にせず、吊り革を持ちながらうとうとしている。なんという平和ボケした連中だ。 もう、いいや。捕まってもかまわん。俺のやりたいこと全て、完走してしまおう。 俺は乳首を弄っていた右手を引っこ抜き、スカートの下に動かした。 左手ではクリトリスを弄ったまま、右手では、少女の割れ目を蹂躙し始める。 「ぃ、あぁ……ぅん……くあ……!!」 よほど気持ちよくなってきたのだろう。少女の腰はただの震えではない上下運動を始めていた。 少女はもの欲しそうに腰をくねらせ、その花弁は蜂を誘い、蜜をしたたらせていた。 ぱくぱくと何かを求めて開いたり閉じたりしている少女の秘所に、俺はついに指を……! 『×××駅ー! ×××駅ー!』 なんとっ! 車内アナウンスによって、俺は指を止めた。それは俺の降りる駅だ。 俺ははっと理性を取り戻し、少女から手を離してカバンを拾いあげ、電車から駆け下りた。 車内には少女を残したままだったが、気にしてる場合はない。 顔を覚えられた可能性は有るが、明日から車両を変えればいいだけの話。現行犯でもなければ証拠不十分だ。少女を避ければいいのだ。 とにかく……。 俺は駅のトイレに駆け込み、その個室で抜いた。 ありえない量。丁度アトリエかぐやで描かれるほどのレベルで出てしまった。 今までこれほどに女に欲情したなど、恐らく初めてではなかろうか。美恵子にすらここまで欲情はしたことない。 というか、美恵子はロリだ。 あの少女のように成熟した体はもってはいない。 ……その違いが、俺の脳を締め付ける。もしかしたら、俺は明日も少女に痴漢行為を働いてしまうかもしれない。 自分の中の『悪』が間違いなく俺自身の身体を蝕み始めていた。 329 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 22 21 ID hZWgCSrL 仕事を終えて、家に帰る。どたどたと慌てて美恵子が飛び出してきて、俺に抱きついた。 ああ、美恵子。なにもかもが懐かしい。 「……ん」 「どうした、美恵子」 「忠雄さん、あなた……浮気をしましたね」 「……!?」 俺は答える暇もなく、組み伏せられていた。玄関のタイルが冷たい。 美恵子は俺の腹に馬乗りになり、ヒステリックに叫ぶ。 「どうしてですか! どうして……忠雄さんには、わたくしがいるのに……! そんな雌犬の匂いと、精子の匂いを漂わせ、わたくしに対するあてつけなのですか!?」 「いや、違うんだ美恵子、誤解だ!」 「なにが誤解ですか!」 そうだ、何が誤解なんだよ、俺。全部俺が悪いんだ。美恵子の誤解なんか、なにもない。むしろ正しい。 「忠雄さん……わたくしが間違っていたのですね」 だが、美恵子は急にもうしわけなさそうな顔をして俺に謝り始めた。 「忠雄さんも、一人の男性です。やはり、将来的にではありますが、妻であるわたくしが……その、下のお世話も、しなければならないのですね……」 美恵子は、顔を赤くしながら自分の上着をめくり上げた。 ぺったんこで、ブラすらつけていない胸が剥き出しになった。あの少女と比べると、いささか迫力に欠けるだろう。 しかし、婚約者の今まで見たこともないような部分を見た俺のベストフレンドは、またまた天を目指して背伸びをしていた。 一発だしただけじゃ、一ヶ月の蓄積はなくならなかったと言うのか。 「忠雄さんの……」 ごくりと唾を飲み込み、美恵子は俺のズボンを剥ぎ取った。露出したマグナムを小さな手で掴む。 「ふごっ!!」 驚いて変な声を出してしまった。美恵子が俺のマグナムをぺろりと舐めたのだ。 「ああ、これが忠雄さんの……夢にまで見た、忠雄さんの……」 「お、おい美恵子、まて!!」 「忠雄さん、忠雄さん……!」 俺の声なんてまるで聞いてはいない。美恵子は夢中で俺のモノを舐め上げていた。 まるで大好物のアイスにでもしゃぶりつくように、小さな口で必死にむしゃぶりつく。 330 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 22 51 ID hZWgCSrL 「わたくしも、忠雄さんと同様に我慢していたのですよ……。でも、もう限界でした。忠雄さんが他の女に取られるくらいなら、こんなくだらない主義は捨てることにします!」 ……なんつーか。俺達は空回りしてるんだなぁ。と、つくずく感じた。 そういえば、美恵子は俺のモノを舐めている。ということは……。美恵子の尻はこっちを向いている。 俺は美恵子のスカートを掴んであげ、尻を露出させた。 二十四歳にしてはちいさくて可愛らしい尻と下着。 「た、忠雄さん……!?」 「我慢してたんだろ? なら、俺もご奉仕してやるよ」 下着を一部だけずらし、割れ目だけを露出させ、人差し指で触れた。 「ああ……!」 ぴくんと美恵子の尻が跳ねる。あの少女にしたときとは違って、声を押さえる必要がない。美恵子の、小さな少女のような声が心地よい。 花弁を指で押し広げ、中を確認してみる。 「た、忠雄さん、見すぎですよ! ……そんなところ、汚いでしょう!?」 「いいじゃないか。綺麗だぞ、美恵子」 ピンク色の膣が見える。俺はそこに人差し指を先っぽだけ入れ、ゆっくりかき回した。 「はぅ……ああっ!!」 ぴくぴくと、美恵子は反応する。その間にも俺の股間の怪物を小さな手で擦り上げるのは継続させている。 「お前、相当な淫乱だったんだな」 「ひぃ……い、言わないでぇ……!」 弄れば弄るほどに、美恵子の秘所からは蜜が溢れ出し、俺の顔に滴り落ちていた。 「俺の指を必死でくわえ込んで、可愛いまんこだ。お前にそっくりだぞ」 「わたくしの……一部なのですから……あっ……あたりまえ……です……!」 可愛い幼な妻(二十四歳なのに、外見は十四歳くらいに見える)への愛情を俺は完全に取り戻しつつあった。 あの少女の肉体に欲情した俺自身が、もはや嘘のようだった。 そうだ。 やはり、あの少女には絶対に近づかないでおくべきだ。 俺にはもう、こんなに魅力的な妻がいるじゃないか。 331 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 23 22 ID hZWgCSrL 次の日。 なぜ、こんなことになっているのか。 俺は再び少女と密着していた。 車両は変えたはず。 ……まさか! 少女も俺を避けるために車両を変え、それがたまたま同じになったとでもいうのか? いや、それにしてもできすぎている。 同じ車両でも、ここまで満員電車のなかで密着などできるか? 移動も制限されているのに。 少女がわざとここに来たとしか思えない。 「……あの」 「!?」 びくりと、今度は俺の肩が跳ねてしまった。 少女が話し掛けてきたのだ。 何を言われるのだ。まさか、俺の痴漢行為を携帯ムービーに収めたから、神妙にお縄につけというのか? それとも、俺を脅すのか? 金を出せと。なら、昨日大人しかったのは演技で、この少女はとんだくわせものか? 「あなた、麻生忠雄さんですね?」 「……ご、ごめんなさい」 俺は反射的に謝っていた。なんと、少女は俺の名前を知っていたのだ。馬鹿な! 調べたのか? それとも、毎日同じ電車に乗っているからいつのまにか知られて……。 ごまかすのももう無理だろう。しらばっくれるよりは、素直に謝ることにした。 「あなたは……犯罪者です……。それは、わかります、よね?」 丁寧な口調で少女が問い詰める。あまり怒っているようには見えない。感情の起伏が少ないタイプなのか。 それとも冷静に見えているほうがむしろ本気で怒っているというあれなのか。 「はい……どのような処分も甘んじて受けます」 もう、諦めた。 俺は小心者だ。こんな局面で対抗しようなんて気は起こらない。 「なら……」 少女は俺に何かを突きつけた。――って、ナイフ!? 「静かにしてください。これから私の要求を言いますから」 こくこくと、俺は必死で頷いた。 「まず、私は『近衛 木之枝(このえ このえ)』といいます。名前を復唱してください」 「こ……このえ」 「そうです」 少女は満足そうに微笑んだ。 332 :痴漢とヤンデレ:エクスタシー ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/30(日) 13 24 05 ID hZWgCSrL 「麻生忠雄。名門国立××大学文学部卒業後、御神グループの系列である某大会社に入社。徐々にその能力を認められ、将来有望なエリートサラリーマン。その性格は真面目で、容姿とあわせて癖が無く、平凡そのもの。婚約者が一人存在。 名は、一条美恵子。その父は××大学文学部教授であり、彼の著書はロングセラーを多数たたき出す、かの有名な一条博士。……すばらしい経歴ですね。あなたのような方が、犯罪者などとは、世の中悪くなったものです」 「そ、その通りです……」 なんで、俺の情報がこんなに……! 馬鹿な! 一日やそこらで、俺の顔をチラッと見ただけで? 前々から調べてないとこうはならないんじゃないのか? 俺は、この少女……木之枝に底知れない恐怖を覚えた。腰が抜けて、まともに声も出ない状態に追い込まれる。 木之枝は、俺にさらに身体をすりつけてくる。 ――そして、その手が俺の股間を掴んだ。 「あなたのような犯罪者はほうっては置けません。よってこれからは私が管理させていただきます。わかりましたか?」 頷く。 「これからは毎朝、この時間のこの車両に乗ってください。そして、私のいる場所まで移動してください」 頷く。 「それからは私が監視します。私以外の女性に手をだしてはいけませんから、これからは私だけに痴漢行為を働くこと。これは、あなたのような犯罪者の性欲の捌け口を身を持って勤めるという、私なりの犯罪の抑止です。いかなる感情的行為にも当てはまりません」 頷く。 「これらの要求に逆らえば、分かりますよね? 順調な人生の素晴らしさは、失ってから気付くものなんですよ」 頷くしか、なかった。 「では、最後の要求です。私に昨日の続きをしてください」 もはや、恐怖で逆らうなどという選択肢は消えていた。 ああ……俺の人生、終わったな。 注:くれぐれも、痴漢は犯罪です。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1836.html
571 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 09 13 ID 21xiy4T5 [2/6] とある日の放課後。私は人気のない第三校舎の裏に向かっていた。 何故かと問われると、今朝、ベタというかなんというか、下駄箱に手紙が入っていたからである。 字が非常に綺麗で、無心で何度も読み返してしまうぐらい綺麗だった。差出人は無く、文字的に女子からの呼び出しかと思ったが、私は別の可能性も即座に考えた。 最近、なんとなく正義のヒーローごっこで不良共を片っ端から叩き伏せていたから、それについての呼び出しかもしれないと。勿論、不良さん達からである。 まぁ、別に叩き伏せればいいんだし、過剰防衛にならないぐらい。 とりあえず、と、近くに都合良く落ちていた鉄パイプを拾い、私は黙々と足を進める。 鉄パイプを拾ったのは、流石に漫画や小説みたいに一人で何人もぼっこぼっこにはできないから、自衛の為に持っていくだけであって、あくまで自衛。 過剰に防衛するかもしれないけど正当防衛だから問題ない。 で、目的の場所に着いたわけだが、不良さん達はいなく、私の通う高校の制服を着た女の子が一人いるだけだった。 女子からの呼び出しだったか。 ぽいっと鉄パイプを投げ捨てる。女の子が若干怯えていたからだ。 ――それにしても。 目の前の女の子は非常に可愛かった。 艶があり、手触りがとてもよさそうな、今まで見てきた中で最上級の高価さを誇る綺麗な黒髪を、背中の中ほどまで伸ばしたロングヘア。 黒々とした、綺麗で可愛らしい大きな瞳は今は少し不安に揺れている。 それらに加えてさらに、紅くて小さくて愛らしい唇。そして全ての元となる雪のように白いキメの細かい肌。 ――なんというか、二次元幼女がそのまま三次元に迷い込んだような容姿をしている。 つまり可愛い。だが、忘れてはいけない。彼女は私の通う高校の制服を着ているが、ロリなのである。幼女である。身長、150センチぎりぎりいってるかいってないかぐらいだ。 私と20センチ近くはなれている。私服で手を繋いで歩いたら私がロリコンと勘違いされかねない容姿だ。 というか、この短時間で手を繋いで一緒に歩くことを妄想させるとは、なんとも罪な可愛らしさである。 いけないいけない。そろそろ本題に入らなければ。 「それで、何の用だ? 私をここに呼んだのはお前だろう?」 「え、と。はい、そうです」 緊張した表情で返す彼女に、思わず手が伸びそうになる。 何だこの、動く麻薬。可愛すぎる。よく戒めないとついうっかり摂取してしまいそうだ。 「それで、用件は?」 そう訊くと、途端に彼女は頬を真っ赤にして俯き、もじもじしはじめる。何故か少し息も荒い。 それを見て私は―― 「げほっ、がはっ!!」 口から血を吐き出しながら倒れた。受身を取れずに諸に背中を打ちつけてしまう。 現世にこんな少女がいるなんて。彼女は、言葉遣いがアレで、影では愚痴ばっか言ってそうな感じの今時の女子高生とは遠くかけ離れた存在だ。 そして美少女、じゃなくて美幼女。これは、まさに絶滅危惧種。 まさか、悪勢力(主に不良)の間で【断罪者】などという痛い通り名を付けられた私が、たかが可愛い幼女に吐血して地に伏せられるなんて・・・・・・。 さっさと、終わらせなければ、死ぬ。死因、萌死になんてのは許されることじゃない。 「よう、けん、は?」 「そんな死にそうな感じで喋らないでください!」 いやいや、さっさと用件を言ってくれないと血が止まらない。 というか、貴方、姿はロリなのに口調は後輩キャラなんだね。もうちょっと、こう、わがままをよく言う子に育って欲しかったりもしたけど、これはこれで、あり、かも。 「よ、ようけんをいってくれ」 「あ、うぅー」 もう一度繰り返すと、やっぱり頬が真っ赤に染まる彼女。 もしかして、私への告白だろうか? それとも、私の幼馴染である神崎 翔への告白を手伝って欲しいとかだろうか。 多分、後者な気がする。アイツは絶賛ハーレム拡大中だからな。顔もいいし、運動もできるし、勉強もできるし、性格もいいし、チャラくないし。 「散れ!!」 「ふみゅ?!」 しまった、妬みのあまり突然叫びだしてしまった。彼女は相当驚いている。普通驚くだろうから彼女の反応は普通なんだけれども。 572 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 15 43 ID 21xiy4T5 [3/6] 「それで、用件は何? どうせアイツなんでしょ? アイツへの告白を手伝ってもらいたいんだよね? あっはっはっはっ。一時でも私への告白かと思った私が馬鹿だった。滑稽だな。 というか前にも数回こんなことがあったな。今回は相手が可愛すぎるから忘れていたが。 あーもう、アイツなんて皆にロリコンロリコン言われて死ねばいいのに。 というかもう刺されなさいよ、あんなに嫉妬されてるんだからそろそろ刺されてくれてもいいじゃないか。 ヒロイン何人だっけ? 担任、生徒会長、私の義妹、アイツの義妹、クラス委員長、お嬢様、風紀委員長、後輩、メガネっ娘、アイドル、クラスメイト。 挙句の果てに、幼女まで?! アイツの攻略キャラの数が多すぎる。 いや、もう何人か病んでいいよ。刺されていいよアイツ。 昼ごはん五月蝿いよ。私もすぐ近くにいるんだから。昼ぐらい静かに喰え。 いや、死ねよもう。主人公体質の癖して鈍感じゃないし、うまく皆を丸め込んでるし、いつも悪い人たちに襲われたときには私を頼るし、その割には見返りないし。 バレンタインなんてアイツのハーレムメンバーの何人から義理チョコを送られるだけなのに対して、アイツはハーレムメンバー以外にも先輩、同級生、後輩からたくさん貰ってるし。 しかも何故か媚薬入っていてアイツ暴走して大変だったし、そうだよね、いつも無表情で無口みたいなキャラ設定が認識されている上に、顔が女の子にしか見えない、というかもはや女の子である私が告白されるはずないもんね。 というか女性としてみればアイドルにも勝てるぐらいのレベルとはどういうこと? 私はニューハーフじゃないもん、男だもん。レズでもないもん、うぅぅぅぅ。」 「あ、あの。鬱宮先輩?」 「ぐすっ、そもそもだな、前提として――え? あっ!」 美少女に話をかけられ、ようやく自我を取り戻す。だいぶ、恥ずかしいところを見せてしまったようだ。というかあんなに長々と喋ってしまうなんて、馬鹿だ、迂闊だ。終わったことだから気にしても仕方ないけれど。 「あ、あのですね、先輩は勘違いをしています」 「勘違い?」 彼女の、さっきから紅みがかっていた頬が更に真っ赤に染まり、首筋までそれは至った。 「わ、私が好きなのは、鬱宮先輩です」 573 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 16 53 ID 21xiy4T5 [4/6] 「・・・・・・」 今、彼女なんて言った? 私が好き? フフフフフフフフ、馬鹿にしてはいけない。この私が普通の告白で初対面の女性と付き合うなんてことありえないというのに。 「駄目だな。笑っちゃうぐらいお前は甘い」 「そう、ですか・・・・・・」 彼女があからさまに落ち込むが、勿論私はそんなことは気にしない。 「お前、私のことが好きなのか?」 「好きです!! この気持ちは本物です!」 ロリが自分の平らに近い(つまり平らではない)胸に手を当て、必死に私へと語りかける。 「だったら、監禁でもして私を閉じ込めて、私を脅して、私と付き合えばいいだろう!」 「か、監禁なんて犯罪じゃないですか!」 「その正常な反応が既に私に好意を寄せる者として失格だ。私を愛しているんだったら、私を手に入れられる可能性を100パーセントにするぐらいじゃないと全然駄目だ。例えば、脅したり、気絶させたりしてな」 「じゃ、じゃあ監禁するので付き合ってください!!」 私は手加減して彼女の頭を叩く。 「そこは私の首を絞めたり、ナイフで脅したり、スタンガンで気絶させる場面でしょうが!」 「は、はぃ!」 「というか、面と向かって監禁すると言われても・・・・・・やっぱり強制的な監禁じゃないと萌えないな」 私が馬鹿なことを呟いている間、彼女は慌てて近くに置いてあった自分のバックを探っていた。筆箱を取り出し、そして何かを取り出す。 ハサミだった。まぁ、合格。 彼女がそれを私の方に突き出しながら、また告白をし始める。 「わ、私と付き合ってください。付き合ってくれないと、こ、殺します」 がくがくぶるぶるでまったく怖くなかったけど、想像して欲しい、可愛い幼女が、ハサミを持って、付き合わないと殺すと言う、震えながら。 とても萌える。生きた麻薬とはこのことだな。一日一回拝まないと吐血しそうだ。 「そうだな、私と付き合うんだったら毎日、電話100回、メール100回が課題だな」 「が、がんばります」 「それと、登下校は、んー、帰るときは一緒でもいいけど、登校中は私の後を隠れながら移動しろ」 「先輩の家は近いから問題ないですけど、どうしてですか?」 「可愛い後輩が先輩をストーカーするなんてとても萌えるじゃないか」 「ぅ。そ、そうですか」 「あれ? そういえば何で私の家を知っているんだ?」 そう訊いた瞬間、いきなり彼女は慌て始めた。 「い、いや。あの、先輩の妹さんから訊いたんです。決して後をつけてたとかじゃありません!」 「ふぅん。まぁ、いいや。それじゃ、さっそく一緒に帰るとしよう。その間に、私と付き合うときの心構えを叩き込んでやる」 「はい!!」 幼女が、私に向けて満開の笑みを浮かべた。それを見た私は大量の血を口から吐き出し、ぶっ倒れたことは言うまでもない。 574 名前:ほのぼのヤンデレ[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 18 18 51 ID 21xiy4T5 [5/6] そして現在、帰宅途中に至る。 「まずだな、私に近づく女は全員殺せ。勿論、冗談じゃないぞ」 「うぅぅ。そんなこと出来るわけないじゃないですか」 「今のところは私に近づく女性なんて深言ぐらいだから別に殺さなくてもいいが」 ちなみに深言とは彼女のことである。言寄深言(ことよりみこと)これが彼女のフルネームだ。ちなみに私は鬱宮病(うつみややまい)だ。非常に微妙な名前である。 「とにかく、私を愛するんだったら、私は狂愛を求める。たとえ体が他の男に支配されても、心だけは私へとあり続けるような、そういう女性が一番だ」 「大丈夫です! ちゃんと病のことは愛しています!」 ちっこい少女に名前を呼び捨てにされ、愛を叫ばれる。これ以上萌える場面が他にあるのだろうか? ちなみに、名前の呼び捨てはお互い合意のもとで、私も彼女の名前を呼び捨てで呼んでいる。私としてはただ単に少女に名前を呼び捨てにしてもらいたかっただけなのだが。 「そして、三日以内に私の部屋に盗聴器を仕掛けること。勿論、家族や私に見つからないように。本当は今日中にしてもいいぐらいだが、深言は素人だからな、三日以内で許してやる」 「あ、ありがとうございます?」 色々と話している間に、どうやら深言の家に着いたらしい。確かに私の家から近い。 「私の家はここです。送ってくださってありがとうございました」 そのまま彼女は家に帰ろうとするものだから、思わず肩を掴んで止める。 「どうしたんですか?」 「そこは普通キスをするところでしょうが! 家に誘い込んで眠らせたり、今ここでスタンガンも可!!」 「えぇ?!」 「どうした? まさかとは思うが、私を愛する者として別れ際に私にキスをするぐらいは常識だよな?」 キスをしやすくするために少し屈んであげる。 「うみゅぅぅ。は、恥ずかしいです」 「順調に行けばどうせそのうちそういう関係になるのだから、大人しくキスぐらいはしなさい」 「わかりました! えぃ!」 私の後頭部に手を添え、一気にキスをしてくる深言。彼女はちゃんと当たる瞬間に減速し、歯がぶつかるということはなかった。 問題はこの後だった。 唇と唇が触れ合った瞬間、言葉では言い表せないような甘さが頭を直撃し、一瞬にして理性が崩壊した。 二秒で崩壊した理性を理性と呼べるのかどうか定かではないが、私は彼女の家の前で、堂々と彼女の口腔内に舌を進入させてしまったのである。 だが、理性が崩壊したのだから仕方がない。彼女が驚いているのを確認しつつも、彼女の暖かい口の中で私の舌は暴れまくっている。 必死に舌を奥に突き入れ、深言の反応がアレなところを重点的に責める。そしてたまに焦らす。彼女の後頭部を押さえつけているため、顔が離れるなどということは一切起きない。 そんなことが続いて五分ぐらい経っただろうか。舌が疲れるなどということがまったくなく、もうずっとディープキスだった。途中からは彼女も積極的に舌を絡め、もはや二人の顔面は唾液塗れである。 それでもディープキスを続けるものだからもし人が見ていたら呆れるしかないだろう。 「んっ、んっ、んっ。ん、んんんんん!!」 彼女がビクビクと体を震わせ、若干私に体重を預けてくる。どうやらイってしまったらしい。 深言がイってなおディープキスは続いた。達した後だからか、少しの間、彼女の舌は動かなかったが、すぐにまた絡まり始める。 どうしよう。これ、本当に麻薬だ。頭が甘く痺れて、蕩けて、何を考えているかわからなくて。もうぐちゃぐちゃで。 十分後、ようやく私は深言を解放した。それまでに彼女は三度もイき、私は嬉しく思った。彼女を感じさせることができたのだ。 まさかキスだけで行くなんて事が現実で起こりえるとは思いもよらなかったが、多分、愛故だろうと勝手に納得しておいた。 頬を染め、荒い息をついている、蕩けきった表情の幼女の頬に軽くキスをしてあげる。というか、深言も我に返らないと危ない人だ。 薬をやっているようにしか見えない。スカートからはぽたぽたと何かが太ももを伝って垂れてきている。名称は言えないけれど。 「それじゃ、明日私をストーカーするように」 「や、病」 「何?」 「ぁ、愛してます」 「フフフフ、私も愛してるよ」 もう片方の頬に軽くキスしてあげる。 「ばいばい」 未だに呆けている彼女を尻目に、私はようやく家へと向かった。 「気持ちよかったな・・・・・・」 口の中に残っている深言の唾液をこくこく飲み干しながら、上機嫌に家の中へ入る。 「ただいま」 明日が楽しみだった。 それと、深言はちゃんと電話100回、メール100回をこなしたのである。ご褒美に何をしてあげようと考えつつ、上機嫌のままベットに横になる。 そういえば、何で私のことが好きになったのか訊いていなかったな。明日にでも訊くか。 ここでようやく私の意識は闇の底に落っこちた。 続くんだろうか?
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2446.html
464 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/12(土) 01 32 42 ID iyQ6MqJ6 ◇ ◇ ◇ ◇ ことっ、ことっ、と心臓が早鐘を打った。 未夢は首を傾げる。 今、膝の上で静かに眠る少年のことが好きだった。 未だ二十歳になりはしない。だが、未夢は愛というものを知っているつもりだ。ただそれだけを頼りに生きてきたのだから。 その未夢の胸を、衝撃と驚愕とが刺し貫いている。 この十七年間の人生で、これ以上ないくらいリューヤのことを愛していたつもりだ。 だがそれは誤りだった。 これ以上は、あったのだ。 リューヤの命が燃え尽きようとしている正にこの時、未夢の思いはこれ以上なく燃え盛っている。 「すぐ、逝くね」 吐き出した言葉に嘘偽りはない。未夢にはその決意がいつだってあった。 だが、あの一言が未夢の胸を焼いた。 驚いた。これまでの人生で、これ以上ないくらい恋い焦がれていると思っていたはずなのに、なんとその先があったとは。 怖いくらいだ。 「リューヤ先輩から離れろ! このクソ女ぁぁ!」 先程まで、呆然として未夢とリューヤの抱擁を見つめていたキサラギが掴みかかる。 (うるさいなあ……) 今は、この胸のときめきをひたすら噛み締めていたい。 未夢にとって、キサラギは玩具以下の代物だ。怖くもなんにもない。 こんなものはすぐ、壊せる。 「また、リューヤを傷つけるの?」 一言。 ただ、一言で未夢はキサラギの胸を刺し貫いた。 「ち、違うっ! ウチは…ウチがリューヤ先輩を傷つけるわけない!」 キサラギの血に濡れた腕が、未夢の服を汚す。 リューヤのものだ。それだけでキサラギは万死に値する。 「一人だけなら、許すよ」 リューヤのために生きて来た。 リューヤがいるから生きられた。 リューヤの判断。それが全て。 そんな未夢には当然の言葉。 「ウチはぁ! リューヤ先輩のためなら、命を差し出せるんだぁ! 見ろ!」 叫びながら、手首に刻んだ惨たらしい傷痕を突き付けるキサラギ。 「ここも、ここも! おまえより多い! ウチの方がリューヤ先輩を愛してる! リューヤ先輩はウチのだっ!」 ほんの少し前ならば、未夢はキサラギの存在を認めていただろう。 だがここに来て、『その先』を知ってしまった未夢の考えは変わっている。 リューヤを自分だけのものにしたい。 リューヤは自分だけのものだ。 どうしても。 どうしてもだ。 だから壊す。キサラギを壊す。 「がんばったね。おめでとう…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………2等賞」 その瞬間、キサラギの動きが止まった。 長い沈黙があった。 「ぐるぁぁぁぁぁ! 殺すッ! 殺すゥッ!」 擦り傷だらけの顔に殺意を漲らせ、キサラギは狂った。もう、どうしようもないところまで。 だが必殺の決意を込めたキサラギの手は、未夢に届かない。 男たちの太い腕がキサラギの腕を捕まえた。 「ガァァァァッ! 離せ! 離せ! クソ女、殺してやるぅぅぅぅ!」 キサラギは、三人掛かりで取り押さえる警官に正しく狂女のように抵抗する。 「対象確保! 対象確保!」 「重傷者一名! 至急、救急車を――」 警官が口々にわめき散らし、キサラギの呪詛の言葉は、喧噪の中に消えて行く。 「さよなら」 薄く笑う。そして―― 「リューヤ、ごめんね。未夢、やっぱり悪い子だよ……」 その呟きも、喧噪の中に消えて行く。 465 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/12(土) 01 36 05 ID iyQ6MqJ6 ◇ ◇ ◇ ◇ 「おはよー」 「ああ…」 目を覚まして二週間ほどが経過しようとしている。その間、未夢に付きっきりの看病をされたことは俺の人生にとって、これ以上ないほどの汚点だ。 「リューヤぁ、おしっこしよ? おしっこ!」 未夢が尿瓶片手に頬笑んでいる。 ……この変態が! しかし、未夢ごときの世話になる日が来ようとは。焼きが回るとはこのことだ。 キサラギの飛び降りの一件以来、俺の周囲は様々なことが変化した。 先ず、未夢は俺の指示なしでも食事を採るようになった。とてもいい変化だ。しかし、甲斐甲斐しく俺の世話を焼く反面で、りんごのように赤く染まった頬を見ていると、コイツが何を期待しているか嫌でも分かってしまう。 目を覚まして以来、俺と未夢は毎日のようにキスしている。一線を超えるのは時間の問題だろう。 俺としては、この距離の近くなった幼なじみとの間に生まれたこの暖かい気持ちを、もう少し時間を掛けて育てて行きたいと思っている。 未夢の両親は、毎日のようにやって来た。 「息子よ……」 相変わらず、未夢の親父はふざけている。このヒゲは、俺が将来の義理の息子だということ信じてを疑っていない。 ちなみに、未夢のお袋もふざけている。 「未夢、子供はまだなの?」 「もう少しだよ」 お腹をさすりながら、幸せそうに答える未夢。 ふざけんな。 マジふざけんな。 それから、うちの親父とお袋も出張先から帰ってきた。 長期の入院が予測されたため、俺としては進級のことが気掛かりだったのだが、そこは親父が骨を折ってくれたらしい。学校側も前後の事情を汲んでくれた。その辺りのことは補習や講習を行う等して便宜をはかってくれるようだ。 「今は休め」 親父の言葉だ。 頑張り屋さんでない俺は、勿論そうさせてもらう。 そしてキサラギは……あれ以来、会っていない。 親父やお袋に尋ねたが、二人とも頑として口を割らなかった。何かある。そう思わずにいられない。親父は学校にも口止めしたようだ。見舞いにやってきた担任も、口を濁すだけで何も答えてくれなかった。 未夢に世話を焼かれながら、リハビリを行う傍らで、空いた時間はキサラギのことばかりを考える。 キサラギの両親は、俺に会いに来なかった。アイツが一人暮らしだったことを鑑みるに、家庭環境に少なからず問題があるのは疑いない。 だが、それを知りたいか、と聞かれれば、俺の答えはノーだ。未だ、学生の俺にとって、その問題は大きすぎる。手に負えない。 キサラギの行く末に関しては、意外な所から言及があった。 「あの娘は、遠くに行ったんだよ」 答えたのは未夢だ。 まあ、あれだけのことをやらかしたのだ。何もないと思う方がどうかしている。納得出来ないが、今はどうしようもない。…今は。 466 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/12(土) 01 38 22 ID iyQ6MqJ6 「リューヤぁ、未夢、もうヤだよ。あんなの……」 「ああ、わかってる。もうしないよ」 心配そうに言う幼なじみの髪を撫でる。 未夢は変わった。 以前は、俺に頼りきりだった生活も、今ではなるべく自分でこなそうと必死で頑張っている。 ケガの功名というやつだ。 俺が重傷を負い、動けなくなったことで未夢の何かが変わったのだ。だとすると、キサラギのあの行為にも意味はあったのだろう。 どんどん俺の手から離れる。それは見ていて微笑ましい光景で……それでいて、ちょっぴり悲しい。 今ならもう、行けるのだろうか。 俺はもう、行ってしまってもいいのだろうか。 この街を出る。 以前から考えていたことだ。 住み慣れたこの街を離れ、新しく厳しい環境で生きて行く。そこでは、新しい出会いが待っているだろう。つらい出来事が待っているだろう。 それらを求め、俺は行きたい。 もちろん、未夢のことは心配だし、気掛かりだ。 だが、遠く離れた場所で、一度自分を見つめ直したい。それは未夢との関係も含まれる。未夢を大事に思うからこそ、そうしたいし、そうすべきだと思う。一度、距離を置き、この胸の思いを確かめたい。 時は流れ、季節は移ろう。 桜が散り、俺は高三になっていた。復学してここまでは、慌ただしく過ぎて行った。 最大の援護はやはり未夢で、相変わらずエロいし変態だが、家事にも積極的に参加するようになったし、自分の体調や着衣にも気を配るようになった。週末は、相変わらず二人きりで過ごすことを望むが、以前とは違い奇抜な行動で俺を悩ませることはなくなった。 危うく揺れるようだった瞳の色も、今はもう落ち着きの彩りを見せている。確固たるものを得たのだろう。 「リューヤぁ……キスしよ……?」 掠れた声で甘える未夢を抱き寄せ、応える。 小さな舌を吸い上げながら、薄い胸を弄る。耳元で漏れる吐息は、熱く湿っぽい。 未夢は少し乱暴にされるのが好きだ。膝の上に座らせて、乱暴に下着を剥ぎ取って行く。抵抗はほとんどない。つくりの小さなそこは、既に粘着質な水分を湛えていて、俺を誘っている。 「りゅうやぁ、アレやだぁ…」 未夢は避妊を嫌がる。無論、良識的な俺は無視する。 「はじめてのときみたく、なまでそそいでほしい……」 「……」 変態が! 雰囲気を台なしにするその言葉を飲み込む。今はまだ、この熱い吐息を感じていたい。 ベッドでもつれあいながら、小さい耳朶に口づけたところで、リビングの電話が鳴り響く。 「やだぁ、もう……!」 「待ってて…」 唇を尖らせる未夢に囁き、トランクス一枚で無粋な闖入者からの電話に応答する。 「もしもし?」 『……』 「どちらさま、でしょうか?」 『……』 不意に、背中に氷柱を差し込まれたような寒気を感じた。 まさか……。 『せんぱい……』 ごくり、と息を飲む。 『ウ チ で す』